兄はDeNA外野手、好敵手は広島3位…「取り残された感満載」でも2年後に見据える夢

東北福祉大・楠本晃希【写真:高橋昌江】
東北福祉大・楠本晃希【写真:高橋昌江】

広島3位の八戸学院大・大道との対戦、プロに行く実力を痛感

 それでも、気に留めていなかった大道だが、プロを見据えた時に曲がりの鋭いスライダーの必要性を感じた。今年に入って、スライダーのリリースを練習。担当の広島・近藤芳久スカウトが「消えるスライダー」と表現するボールに変化を遂げた。スライダーでの空振りが増え、今秋のリーグ戦では36回で60奪三振、奪三振率15.00。3年春の9.23、同秋の10.43からグンと向上させた。最速150キロが注目されがちだが、東北地方の担当スカウトたちが評価していたポイントはマウンド度胸に加え、「変化球の精度が高い」という点だった。

 楠本は二塁打を放ったが、以降、東北福祉大打線は空振り三振を連発した。140キロ中盤のストレートにもバットが当たらない。

 2人の2度目の対決は8回。カウント1-1から137キロのスプリットに空振りした後、内角に直球がズドン。大道は「まさか三振を取れるとは」と自分で驚いた。

「インズバ、147キロを決められて…。僕の時が一番、よかったかもしれないです。みんなの打席を見ていて、そうでもなかったんですけど、僕の時だけピタピタに決められました」

 その裏、八戸学院大に追いつかれ、延長へ。東北福祉大は無死一、二塁からはじまるタイブレークの延長10回2死二、三塁で4番・小椋が中越え2点適時三塁打を放ち、勝ち越した。ボルテージが上がる中、打席に向かったのが楠本だった。「僕はスライダーを張っていました。ここでストレートは絶対に来ないだろうと思ったので」。ところが、大道が投じたのは144キロの直球。見逃した。2、3球目もボールとなったが、直球が続いた。4球目の134キロのスプリットに空振り。144キロ直球がボールとなり、フルカウントで大道は捕手のサインに首を振った。そして投じた、この日の90球目。楠本のバットは空を切った。試合後、大道が打ち明けた。

「最後、サインはインコースのストレートだったんですよ。そこで首を振れたのが大学での成長。最後はスプリットですね。高校の時だったらストレートを投げて打たれていたと思います」

 楠本が待っていたのは直球だった。「最後はストレートとフォークだけの配球で…」と、参りましたと言わんばかり。学生野球で力を伸ばしたことを実感した。

「すごいですよ。高校の時、県では有名でしたけど、甲子園には僕らが行った。八戸学院大に行って、全国大会でも投げて、侍ジャパン大学代表の候補合宿にも呼ばれて、すごい存在になりましたよね。僕は高校時代にボールを見ているので、すごさを分かっている。ドラフトも早く消えるだろうなと思っていました」

兄はDeNA楠本…「取り残されている感が満載なんですよね」

RECOMMEND

KEYWORD

CATEGORY