「恥ずかしい試合はできない」発足まもないチームを頂点に導いた“ライオンズ”の名

埼玉西武ライオンズ・レディースで主将を務める出口彩香【写真:佐藤直子】
埼玉西武ライオンズ・レディースで主将を務める出口彩香【写真:佐藤直子】

1軍と2軍を完全に分けて活動「厳しいけど、その方がスッキリする」

 チーム発足1年目だというのに、コロナ禍により早々に活動自粛に追い込まれた。4月から6月までの3か月間は全体練習ができず自主トレーニングの日々。選手同士でLINEをしたり、新谷監督の音頭でオンラインミーティングを開いたり、何とかコミュニケーションを図ったが、チームとして活動再開後まもない頃の様子を、主将の出口は「今までキャプテンをいろいろなチームでやらせてもらったんですけど、一番と言っていいほどチーム力がなかったです」と振り返る。

「個々のポテンシャルだけで野球をやっていたので、それが自分の中で一番不安だったんですけど、しっかりコミュニケーションを取りながら練習を重ねるうちに徐々に打ち解けられて、チームの雰囲気が変わった。この大会に入った時も、盛り上がるところは全員で一体感が感じられたので、チームとして成り立ってきたと思います。チーム力と個々の力が一致した時にはパワーが出るな、と」

 チームが成長した背景には、新谷監督の大きな決断が1つあった。それはチームを1軍と2軍とに完全に分けること。2軍の指導は田口紗帆コーチに任せて、練習から別メニューで臨んだ。この効果が絶大だったのだ。

 日本代表クラスの選手もいれば、高校を卒業したばかりの選手もいるため、チーム内に大きな実力差があった。基礎技術をアップさせるべき選手と、必要な箇所のブラッシュアップをすればいい選手とが、同じ土俵の上に乗れば歪みは生まれてくる。そこで新谷監督は1軍と2軍に分けて、それぞれがやるべき課題に集中させた。

「1軍と2軍を完全に分けました。男子では当たり前だけど、女子野球ではこんなことはないですよ。でも、これで辞めるようなら、最初から入ってくるな、と。厳しいけど、その方がスッキリする。1軍がエラーすれば『何やってるんだ』となるし、2軍は1軍に負けまいと一生懸命練習するし。(チームの)信頼度が全然変わりましたね」

 それまでの練習試合では、控えの選手は試合後半からレギュラーに替わって出場していたが、1軍と2軍を作ってからは、第1試合は1軍、第2試合は2軍と、試合も完全に分けた。おかげで控えだった選手の出場機会が増え、より自分が取り組むべき課題や目標が明確になったという。出口は「1軍と2軍に分けて、1軍は自覚が出ましたし、2軍は追いつこうと頑張った。効果は大きいと思います」と話す。

新谷監督が願う女子野球界の活性化「今までやってきたチームは諦めないでほしい」

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