アマの現場では「感覚的な指導が…」 元ロッテ右腕が投球動作解析を学ぶ理由
連載『島孝明のセカンドキャリア―Brand New Days―』第6回
こんにちは、元ロッテの島孝明です。現在、私が大学で学んでいる中で、バイオメカニクスという分野があります。バイオメカニクスとは、生体力学のことを指しており、ここではスポーツにおける力学的な観点を主として扱っています。プロ野球においても、ボールの回転数や打球の速度・角度を計測するなど、あらゆる場面でこの学問は生かされています。今回は、バイオメカニクスを通して考えた、今後の指導の在り方について書いていきたいと思います。
私が通う國學院大学では、バイオメカニクスを専門分野とし、NPB球団のデータアナリストとしても活躍したことのある神事努先生がいくつかの講義を開講しており、そのうちの一つである「運動学」を履修しています。そこでは今後、専門的にバイオメカニクスを学ぶ際に必要となる基礎的な部分を主として取り扱っています。
基礎でありますが、物理学の様々な定義や法則、数学的な事項が多く、典型的な文系である私にとっては、理解することに少し苦労しているというのが現実です。内容としてはどれも興味のあるものばかりなのですが、時折、どう考えても、自分の頭の中ではさっぱり理解することの出来ないようなものもあります。そうした自分にもどかしさを覚えつつ、もっと数字に強い自分でありたかったと嘆くことも少なくないです。
これまでの野球において数値が扱われるものといえば、投手の球速や防御率、打率などが代表的でした。しかし、メジャーリーグでスタットキャストと呼ばれるITシステムが導入されると、選手のあらゆるプレーやパフォーマンスが数値化されると同時に、新たな指標も数多く生まれ、より客観性を持った見方ができるようになりました。
日本においてもトラックマンが導入されたことで、結果を残している選手は具体的にどんなところが凄いのかといったことや、選手の隠された能力や特徴が分かったりするなど、これまでと違った角度から野球を見るようになった人も多いのではないでしょうか。選手においても、数値化された客観的データは、自身のパフォーマンス向上のために生かされており、また野球という競技自体が高度化していることにも、大きく影響していると考えています。
私自身も、現役の頃はデータに対して関心があり、個人的に機材を用いたフォームの解析をしたこともありました。また、ブルペンや試合の投球を動画に撮ってもらい、振り返りをするといったことも高校の時から行っていました。客観的に振り返ることは、自身がイメージしている動きと実際の動きにどういった差があるのか理解が深められ、またそのギャップを埋めるように練習を行うことで、効率的にパフォーマンスを向上させることに役立っていました。