「想像とは正反対の方だった」 元ロッテ右腕がすべてを打ち明けた吉井コーチの存在
連載「島孝明のセカンドキャリアーBrand New Days―」最終回
こんにちは、元ロッテ投手の島孝明です。プロ野球の世界に入ってから、投手のみならず野手のコーチも含めて様々なコーチと関わってきました。ポジションごとにコーチが配属されていることはプロならではであり、一線級の活躍を残してきた方々の指導からは、当然学ぶことも多かったです。そんな中でも、吉井理人コーチとの出会いは自分の現役生活においても特別なものであり、また現在の自分を構成する重要な要素となっています。今回は、私と吉井コーチとのエピソードについて書いていきたいと思います。
私が吉井コーチと初めて出会ったのは2018年の秋季キャンプの時でした。以前、吉井コーチの著書である「投手論」を読んだことがあり、その中でかなり気性が荒いエピソードが書いてあったのを記憶していたことに加えて、日米に渡り数々の活躍を残してきた方ですので、当然厳格な気質を持ち合わせていると予想していたのですが、まもなくしてそれは杞憂に終わることとなりました。
吉井コーチが合流する当日の朝、チームの慣例として練習前に全体で集合したのち、投手と野手で別れ、その日の練習スケジュールやその他必要事項などが共有されます。それなりに堅い雰囲気で行われていたのですが、投手陣の集合時、吉井コーチが挨拶の中でいきなり冗談を言い放ったことが、強烈な印象として残ったのと同時に、自分の中で創り上げられていたイメージが一瞬にして崩れていきました。
想像とは正反対の温厚な性格であった吉井コーチは、投手陣との交流を積極的に図り、また野球以外の話題も振ったりと、各々とのコミュニケーションを大事にしているように私の目には映りました。当然私もその1人で、秋季キャンプでは個別の練習メニューの提案、且つその手伝いをして頂いたり、1軍の春季キャンプに帯同しオープン戦を経験させてもらうなど、面倒を見て下さりました。またその後、ZOZOマリンスタジアムで行われたオープン戦で最終回に登板させてもらえたことも、私の僅かな現役生活の中において、今では良き思い出となっています。
シーズン中では、二軍にいた自分に対して「元気にやっているか」などと気にかけていることを、度々人伝で聞くこともありました。しかしその後、一度も1軍で登板することなく2019年シーズンを終え、球団から育成契約の打診を受けることになるのは、皆様がご存知の通りです。
育成契約に切り替えるにあたり、一度自由契約となりましたが、10月に行われた宮崎フェニックスリーグには参加することとなりました。練習に取り組みながら今後の進路についても考えていくことになるのですが、通常二軍のコーチ・スタッフだけが参加するフェニックスリーグに吉井コーチも参加することになっていました。怪我なども重なり、なかなか復調の兆しが見えなかった私は試合後の時間を使い、そこでまた一緒に練習を行うようになりました。