球数制限、大人の罵声にイエローカード 少年野球界に一石を投じたポニーの使命
国際標準バットとイエローカード導入にも効果、一方で改善が必要とされたものは…
国際標準バットの導入は、投手の安全確保と打者の技術向上を目指す狙いを持つ。金属バットは近年、反発係数が高くなり、飛距離が伸びるものへと変化してきた。そのため、バットの芯でボールを捉えなくても安打や長打になるケースが多く、打者の技術低下に繋がると考えられている。また、コンタクトされたくない投手が早いうちから変化球を投げたり投球過多となったり、故障を引き起こす一因として指摘されるほか、想像を超えるスピードで飛び出す打球が投手や内野手を直撃する危険性も指摘されている。
そこでポニーでは、直球の切れと制球力で勝負する投手の原点教育、バットの芯でボールを捉える打者の原点教育に立ち返り、金属バットながら木製バットに近い打感を持つ国際標準バットの導入を決定。中学1年生の大会、および全日本選手権大会ポニーブロンコ大会で使用を義務化すると、その効果は期待以上だったという。
国際標準バットは反発係数が低いため「飛距離が出ない」という点に注目されがちだが、使用する過程で、しっかりと芯で捉えた打球は通常の金属バットに劣らない飛距離を計測することを実感。また、芯を外した内野ゴロを処理するために、内野手は守備位置から前にチャージして捕球しなければならないため、守備面でも原点教育に役立つという効果が得られたそうだ。2021年も1年生は引き続き運用し、2・3年生での導入は高校野球の対応を見ながら決めていくことになる。
その他、イエローカードについては、保護者のマナー違反に対して3度提示されたというが、いずれもコロナ禍での声援自粛要請に違反するもので、子どもたちが萎縮するような怒声などはなかったようだ。イエローカードの導入という野球界には珍しい発想が、保護者、指導者ともに言動を顧みるきっかけとなったようだ。
以上の3点では導入効果が認められたが、さらなる改善が必要だとされたものもある。それが、喫煙マナーだ。受動喫煙防止を目指し、大会開催時には喫煙スペースを設けて、子どもの目に留まらない努力をするよう通達したものの「厳格運用には程遠い状況だった」と連盟は明かす。喫煙を我慢できない大人が多い現実があるという。そこで2021年はもう一歩踏み込んだルールを設定。連盟や各協会が主催・共催する大会では会場敷地内の完全禁煙を目指し、「吸わせない・見せない・臭わせない・感じさせない」をモットーに掲げ、子どもの動線から外れた場所に四方を幕で囲われた喫煙所を設けるなどの対策を講じるとした。
好感触を得た施策、反省を伴う施策など「SUPER PONY ACTION パート1」の効果はそれぞれだったが、何よりも大切なことは、ポニーが子どもたちの安全や未来を真剣に考え、具体的なアクションを起こしたという事実だろう。個々のチームではなく連盟そのものが画期的で踏み込んだルール制定をしたことは、ポニー内にとどまらず、外部団体にも改めて「子どもにとって本当に大切なことは何か」というテーマについて考えるきっかけを与えることになったはずだ。
「SUPER PONY ACTION パート1」の検証と同時に、ポニーでは2021年に新たに実施する「SUPER PONY ACTION パート2」を発表。野球を通じて大きく羽ばたく子どもたちを支援するプランなど、さらに独自性を深めた取り組みについて隔週連載で解説していく。
(次回は1月29日に掲載予定)
(Full-Count編集部)
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