「最高のプロ野球人生とは言えない」元ヤクルト上田氏“フェンス恐怖症”の苦闘
2015年のリーグ優勝が一番の思い出「野球人生で1番緊張した」
上田氏にプロ生活で最もうれしかったことを聞くと、「2015年のリーグ優勝です」と即答する。この年、82試合に出場し、そのうち40試合がスタメン。特にシーズン最終盤に先発出場が続いた。「野球人生で1番緊張した」と言うのが、9月27日に敵地・東京ドームで行われた巨人戦だ。ヤクルトはこの試合に勝てば優勝マジック「3」が点灯するが、対戦相手の巨人とのゲーム差はわずか「1」しかなかった。上田氏は「1番・中堅」でスタメン出場している。5回の攻撃で、先発投手の石川が自ら右前適時打を放ち先制。その直後、上田氏は1死一、三塁から二ゴロを打ち、俊足を飛ばして併殺を免れる間に、貴重な追加点をもたらした。ヤクルトは2-1で際どく勝利をつかんだのだった。
そして5日後の10月2日、本拠地・神宮球場での阪神戦で14年ぶりのリーグ制覇を決めた。1-1の同点で迎えた延長11回、雄平が右翼線へサヨナラ打を放った。上田氏は「1番・中堅」で出場し5打数1安打。上田氏にとってプロ生活唯一の優勝決定日は、くしくも27歳の誕生日でもあった。
14年間の現役生活を振り返り、「納得いくシーズン、個人的に今年は頑張ったと胸を張れるシーズンは1度もなかった」と悔やむ上田氏。もっとも、どんな大選手でも、現役引退する際には「ああすれば、もっといい成績を残せたのではないか」という後悔に苛まれるものだ。「一片の悔いもない」と言い切れる選手は極めて稀だろう。上田氏もこれからのセカンドキャリアの中で、現役生活で得たものの大きさを実感するに違いない。
(宮脇広久 / Hirohisa Miyawaki)