「サボっている人には訪れない」 元西武右腕が語る、イップスを克服した瞬間
新谷博氏は駒大4年春の開幕戦で突然四球を連発
意識せず簡単にできていたことが突然できなくなる「イップス」に苦しんだことのある野球選手は少なくない。西武時代の1994年に最優秀防御率のタイトルを獲得した新谷博氏もその1人。アマチュア時代に4年間悩んだイップスを乗り越えて27歳でプロ入りした経験を明かした。
それはなんの前兆もなく、突然やってきた。駒大4年時の春季リーグ戦の開幕試合。「1球目にストライクが入らず、あれっと思ったら、もう投げられなくなっていましたね。腕が縮こまって、ストライクを投げたいけれど入らない。それからは思いきり投げられなくなりました」と新谷氏はその瞬間を振り返る。
1球もストライクが入らず3者連続四球。なんとか4番打者を空振り三振に仕留めたが、5番打者に押し出し四球を与えて降板した。2戦目も登板したが、やはり思うように投げられなかった。「監督は調子が悪いだけくらいに思っていたのでしょうが、自分は怖くて、もう投げたくなかったです」。
思い当たる原因はあった。佐賀商時代にヤクルトから2位指名を受けながら駒大に進学し、迎えた最終学年。春先に当時の太田誠監督と相談し、大学卒業後に満を持してプロ入りすることを決めていた。ドラフト1位候補が投げる開幕戦には多くのスカウトが訪れていた。
「スカウトの人がいっぱいいたし、当時常勝軍団だった駒大を背負うエースという立場。いろいろなものが重なったんじゃないですかね。生まれて初めてです、あんなに緊張したのは」