楽天入団テストは途中で帰宅、鷹の練習参加も… 幻のドラフト指名“異色右腕”の今

ソフトバンクの練習参加、評価上々で指名確実の声も…

 当時はまだ、高校・大学・社会人以外からのプロ入りが珍しかったころ。半ばNPB入りは諦めていたころに“3度目の正直”でソフトバンクの練習参加の話が代理人から来た。「今度は大丈夫だから」。そう念を押され、選手たちと一緒にプレー。食事の際、当時若手だった川崎宗則から「体でかいすね。内野手ですか?」と聞かれ、照れながら「いやピッチャーです」と返した思い出も懐かしい。

 2日に渡ってアピールし、周囲の反応は上々。最後は当時の王貞治監督と握手を交わした。マスコミにも報じられ、周囲からも下位で指名は確実だと言われていた。だが、蓋を開けてみると「長坂秀樹」の名前はなかった。「下位指名は状況によって変わってくる。やっぱり、上位指名でプロに行かなきゃダメだと思いましたね」。淡々と現実を受け入れ、また海を渡った。

 2009年まで米国をはじめ、カナダやコロンビアのチームにも所属。最速95マイル(約152キロ)の直球で、異国の打者たちをねじ伏せていった。帰国後は、当時の四国・九州アイランドリーグ長崎やBCリーグの新潟でプレー。2011年に現役を終え、野球塾「Perfect Pitch and Swing」を開いた。

 実現することはなかったNPB入り。自らで選び、歩んできた異色の道に胸を張る。ただほんの少し、今でも胸の片隅に引っかかっている思いもある。

「タイムマシンがあるなら、大学時代の自分のもとに行って『やめるなよ。辛抱してやれ』って言いますかね。あの時はとにかく意地張ってやってましたから。やめなければ、もしかしたらプロに入れたのかなって」

 野球にも、人生にも、“たられば”はない。分かっているからこそ、少年たちと笑顔あふれる日々を過ごせている。

【写真】米独立リーグなどでプレーした現役時代の長坂秀樹氏

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