スーパー中学生と呼ばれた逸材も甲子園はラストチャンス 高知・森木大智の今
中学時代の監督・浜口佳久氏が高校でも監督に
スーパー中学生と呼ばれた右腕も、甲子園出場のチャンスは最高学年だけとなった。大きくなる周囲の期待に押しつぶされそうな時期もあった。ストレートを磨きたいと色々試しても、結果に繋がらなかった。
そんな自分を救ってくれたのは、自身も野球経験があり、いつもアドバイスをくれる父の一言だった。
「お父さんに『やるしかないぞ。お前そんな後ろ向いている場合じゃないよ』と言われて、『負けてられないな。やらなくちゃいけない』と思ってしっかりやるようになりました」
浜口佳久監督の技術指導、メンタル指導もあった。中学から指導を受け続ける恩師の教えも大きな後押しとなった。
「力で野球をやるのではなく、考えてやらないと上の世界ではやっていけないよと。考える野球というのを教わって、自分の思考、考え方の基礎ができたのは良かったです。力だけではなく、自分のまっすぐを生かすために、なぜこのボールを投げるのかと、1球1球意図を持って投げるようになってから、球速はそこまで重要視しないようになりました」
やみくもに投げていただけの自分と別れを告げた。自分のストレートに意思を込めた。チームの勝利のことを考えて、一丸となってやる野球を目指すことに焦点を置き、考える野球を楽しみ始めた。
昨年秋の大会で森木は自己最速の球速151キロをマーク。軟式では投げられたが、硬式ではなかなか出すことのできなかった150キロの壁を打ち破った。決勝(再試合)で敗れはしたが明徳義塾戦(第1試合)は延長12回で日没コールド。森木は170球を投げ切り、相手エース・代木大和投手とは壮絶な投げ合いを演じた。
決勝再試合は大事を取って森木の登板はなかった。県2位で出場した四国大会では1回戦の高松商戦(香川)で先発も、ストレートを狙われ、8回5失点(自責4)。2-5で敗れ、選抜への切符は掴めなかった。
「(四国大会は)自分をコントロールできなかったです。ボールのキレとか、そういう細かなところもあるんですけど、今は精神力とか気持ちの部分が重要だと思うので、自分に負けない強さを磨いていきたいです」
中学、高校と、森木をそばで見てきて6年目になる。浜口監督が森木の成長を感じるのは技術面だけではない。
「球速とかスキル的なところももちろん伸びてきたけど、1番はやっぱり考え方がしっかりしてきた。これだけ素晴らしい選手だと普通は自分のこと中心になると思うんですけど、自分のことだけじゃなくて仲間や周りで応援してくれているサポーターを大切にして、みんなで頑張って野球をやっていくという姿がすごく成長したかなと思います」
注目されるからこそ悩んだ日々を乗り越え、成長を続ける。「高校野球界NO1ピッチャーになりたい」という思いを胸に、高校野球、最後の1年に挑んでいる。