ロッテ唐川侑己はなぜ抑えられるのか? 140キロ前後でも打たれない理由
奪三振率は低く打たせて取る投球が唐川のスタイル
続けて、セイバーメトリクス的な観点から、各年度における投球を分析していきたい。
先述の通り、唐川は目を見張るほどのスピードボールや、落差の大きい変化球を武器とする投手ではない。そのため奪三振率という点では、若手時代から現在まで高い数値は記録していない。特に2012年は統一球の影響で打球の飛距離が出なかったこともあり、奪三振率3.40と非常に低い数値に。それでも、防御率2.66と投球内容そのものは安定しており、打たせて取る投球が機能していたことの表れと言える。
次は「BABIP」という指標に目を向ける。この指標は、本塁打を除くインプレーの打球が安打となった確率を示すものであり、その特性上、打たせて取る投球が機能していたかを示す数字にもなる。
BABIPは投手自身によってコントロールできる要素が少なく、運に左右される傾向が強い指標とされている。また、特定の期間において平均値の.300から大きく外れる数値となった場合、その後は逆の方向に収束していきやすい傾向がある。ただし、投手の実力が不足しており、痛打を浴びやすいというケースもあるため、あくまで各選手のキャリア平均の値を参考にすべきである、という見方もある。
唐川が記録しているキャリア平均のBABIPは.299。先述した考え方でいえば、これが“基準値”となる。実際、BABIPがこの数値を大きく上回っていた2008年、2014年、2015年、2019年の防御率はいずれも芳しいものではなく、スタイルの通り、味方の守備に左右されるケースが少なくはなかったことがうかがえる。