ロッテ唐川侑己はなぜ抑えられるのか? 140キロ前後でも打たれない理由
安定した制球や投球バリエーションの変化が唐川を支える武器に
最後に、昨季の唐川が記録したコース別の被打率についても見ていきたい。
ど真ん中では痛打を浴びているものの、それ以外のコースでは真ん中低めを除き、いずれも.250以下という安定した数字を記録している。ストライクゾーンの中で勝負しても打たれるリスクは低いということであり、むしろ、ボールコースに外れる球が打たれるケースが散見されるという点が特徴的だ。
また、ストライクゾーン内に被打率.000のゾーンが3つあり、.125以下のコースも2つ存在している。打たれる可能性が非常に低いコースを多く備えているというのも、唐川投手の投球の安定感を支えている要素だろう。投手から見て右側のコースはいずれも被打率.100と、総じて得意としていることがうかがえる。
このゾーンには決め球のチェンジアップを投じて打ち取るケースが多かったが、真ん中の高さにカットボールを投じるケースもいくつか存在。この場合は右打者にとってはフロントドア、左打者にとってはバックドアとなり、やはり打者にとっては厄介なボールとなりうる。こういった、主力の球種とのシナジーも、このゾーンを得意としている要因の一つといえそうだ。
安定した制球、投球バリエーションの変化、痛打される割合の減少、味方の堅い守備。2020年の唐川投手が目を見張る安定感を維持し続けた理由は多岐にわたるものだ。若手時代とは異なる投球スタイルを身に着けた唐川投手だが、目を見張るスピードボールや大きく変化する球はなくとも、打者を手玉に取っていくという点は今も昔も変わりない。
先発時代からのモデルチェンジを成功させ、リリーフとして主力の座へと返り咲いた唐川。地元出身の生え抜き右腕が2020年に見せた大活躍は、ファンにとっても喜ばしいものとなったことだろう。「いつもありがとうございます 優勝しよう 力をください」。2020年、唐川がロッテの公式ホームページにおいて「マリーンズファンへ一言」という項目で残した言葉だ。自らがまだ経験したことのない、悲願のリーグ優勝に向けて。千葉のファンに愛され続ける成田の希望の星は、今季もチームのためにその右腕を振り続ける。
(「パ・リーグ インサイト」望月遼太)
(記事提供:パ・リーグ インサイト)