開幕5戦5勝の巨人・高橋よりデータでは凄い…セイバー指標で選ぶセ月間MVPは?
公式の月間MVPは5戦5勝の巨人・高橋らが候補だが…
【投手部門】
投手評価には、平均的な投手に比べてどれだけ失点を防いだかを示す「RSAA」を用いる。チームの守備能力と切り離した投手個人の失点率を推定する指標となっている。ここでのRSAAは「tRA」ベースで算出。tRAとは、被本塁打、与四死球、奪三振に加え、投手が打たれたゴロ、ライナー、内野フライ、外野フライの本数も集計している。各チームのRSAA上位3人は以下の通り。
阪神:ガンケル3.61 西勇輝3.55 スアレス2.42
巨人:中川皓太4.07 今村信貴3.81 高木京介1.61
ヤクルト:近藤弘樹4.03 清水昇3.08 奥川恭伸1.31
広島:大瀬良大地5.81 栗林良吏4.34 コルニエル3.85
中日:柳裕也5.96 又吉克樹4.45 R.マルティネス3.31
DeNA:山崎康晃3.63 伊勢大夢1.55 砂田毅樹1.37
公式の月間MVPでは勝利数や防御率が大きく寄与するため、有力候補は2人に絞られるだろう。
高橋優貴(巨人)
5試合 5勝0敗 防御率1.80 奪三振19 奪三振率4.89 被本塁打2
WHIP1.11 QS率100% K/BB1.19
ガンケル(阪神)
5試合 4勝0敗 防御率1.78 奪三振24 奪三振率7.12 被本塁打1
WHIP0.89 QS率80% K/BB3.43
しかし、高橋の名前が巨人のRSAA上位3人の中にない。tRAは被本塁打、与四死球、奪三振の他に、打たれたゴロ、ライナー、内野フライ、外野フライで評価するため、内容の良し悪しが反映されることになる。同じチームの今村信貴と比較すると以下の通りになる。
今村信貴(巨人)
防御率1.62 WHIP1.08 援護率3.08
被本塁打3 与四球8奪三振35 K/BB4.83 BABIP.321
ゴロ58 内野フライ3 外野フライ35 ライナー3 GB/FB1.41
高橋優貴(巨人)
防御率1.80 WHIP1.11 援護率5.45
被本塁打2 与四球16 奪三振19 K/BB1.19 BABIP.204
ゴロ51 内野フライ13 外野フライ35 ライナー9 GB/FB0.89
防御率、WHIPともに今村の方が良い数値に。また、与四球、奪三振の数や比率、打たれた打球の質も、今村の方の評価が高い。勝利数は高橋5に対して今村は2だが、これには援護率やBABIPの差が寄与していると考えられる。
tRAによる投手評価で最もセ・リーグで高い数値を残したのが、中日の柳裕也だ。
柳裕也(中日):tRA5.96
登板5 2勝1敗
防御率2.08(リーグ5位) WHIP0.85(リーグ2位)
QS率80%(リーグ4位タイ) 被打率.194(リーグ5位)
奪三振率10.85(リーグ1位) K/BB7.83(リーグ1位)
柳は3、4月に47奪三振。2位の今村、大野雄大の29に大きく水をあけ、リーグ1位だった。また四球も6しかなく、奪三振と与四球の比であるK/BB7.83もリーグ1位。ゴロとフライの比率であるGB/FBも1.16とゴロの割合が多いことがわかる。内容の良い投球であることを評価して、セイバーメトリクス目線で選ぶ3、4月の月間MVPに推挙する。
鳥越規央 プロフィール
統計学者/江戸川大学客員教授
「セイバーメトリクス」(※野球等において、選手データを統計学的見地から客観的に分析し、評価や戦略を立てる際に活用する分析方法)の日本での第一人者。野球の他にも、サッカー、ゴルフなどスポーツ統計学全般の研究を行なっている。また、テレビ番組の監修などエンターテインメント業界でも活躍。JAPAN MENSAの会員。近著に『統計学が見つけた野球の真理』(講談社ブルーバックス)『世の中は奇跡であふれている』(WAVE出版)がある。