「時代に即した多様性を」 ポニー初の女性理事が目指す柔軟な組織のあり方
会社員、アナウンサーとマルチな活動をする小出村珠美さんに任されたSDGsの実現
近年よく耳にするようになった「ダイバーシティ」という言葉。日本語では「多様性」を意味し、国籍、人種、性別、宗教、年齢、価値観などが違う人々が集まった状態を指している。ダイバーシティの実現は、それぞれの違いを認め合いながら差別のない社会を目指す上で土台となるものだ。
子どもたちの成長を守るためによりよい環境作りを目指す日本ポニーベースボール協会(ポニー)もまた、多様な意見に耳を傾けるため、今年度から新たな試みとして女性理事を起用している。日本では1975年以来、40年以上にわたるポニーの歴史の中で初めて女性理事に就任したのが、小出村珠美さんだ。
外資系企業に勤めながら、スポーツイベントのMCや場内アナウンサーとしても活躍する新理事。那須勇元事務総長から期待される役割は、ポニー内におけるSDGsの実現だ。SDGsとは、2015年に国連が発表した国際社会の共通目標で、2030年までに達成すべき17の項目が掲げられている。その中には「すべての人に健康と福祉を」「質の高い教育をみんなに」「ジェンダー平等を実現しよう」「人や国の不平等をなくそう」など、直接的・間接的にポニーの活動とリンクするものがある。
日本の野球界に目を向けると、残念ながら20世紀の価値観から抜けきれず、ダイバーシティやインクルージョンという点ではまだまだ発展途上の段階にある。子どもの人権を無視した指導方法を変えたり、子どもを故障から守ろうとしたりする変革の波は押し寄せているが、旧態依然とした部分も多い。また、これまで男性を中心に発展してきた歴史があり、女子野球が市民権を得始めたのは最近のこと。ましてや協会や主催者、首脳陣に女性が加わることは、まだ稀だ。だが、野球界の将来を見据えた時、様々な観点からSDGsの実現は避けられない道となっている。
職場でもダイバーシティ実現に向けた役割を担っているという小出村さんは「野球のいいところを生かしながら、プラスαとして、時代に即した多様性を採り入れていくことが大事だと思います」と話す。
「息子2人が野球をしていたこともあり、野球は子どもにとってすごくいいスポーツだと思っています。チームとして動く意味や大切さを学べたり、自分のチームだけではなく対戦チームの選手とも顔見知りになって、子どもたちのネットワークが広がる。その他にも、野球は1人の選手が投げる、打つ、捕る、走る、といったいろいろな要素を求められるし、頭も使うので、子どもには抜群のスポーツ。野球から学べることは多いので、ぜひ一度やってみてもらいたいと思います」
野球、サッカー、バスケットボール、水泳など、子どもがどのスポーツを始めるか決める時、時には本人の意志以上に大きく影響されるのが保護者の意見だ。共働きや一人親の家庭も多く、週末は用事を済ませたり休養を取ったり、貴重な時間となる。保護者の負担が少ない競技と考えた時、野球が選択肢から外れるケースも多い。
「お母さんたちが『お茶当番が大変らしいね』『毎週土日が潰れるのはちょっと……』と敬遠して、子どもたちが野球と出会うチャンスをなくしてしまうケースも耳にします。本当に残念ですよね。だとすれば、そういった意見にも耳を傾けながら、今の時代に対応した組織を作っていかないと、ゾンビ化して消えていってしまうと思います」