「盗塁の評価は数ではない」 専門家が解説、新時代のスピードスターに求めること
盗塁の価値は「いかに勝利に結びつくか」がポイントと飯田氏
勝負を分ける緊張の一瞬。バッテリーが警戒する中で鮮やかに盗塁を決める。プロ野球ではそんな「走り屋」が台頭している。昨年はソフトバンクの周東佑京内野手が50盗塁を記録し、チームの日本一に貢献。今年は新人選手でもスピードスター候補が現れ、ファンを魅了している。今回は専門家と盗塁の「価値」について考えてみたい。
盗塁の価値は何か。盗塁数なのか、盗塁成功率なのか……。1992年にヤクルトで盗塁王を獲得し、黄金期のリードオフマンを務めた野球解説者の飯田哲也氏は「いかに勝利に結びつくか」が一番のポイントだという。
「盗塁王が、下位チームから生まれることもあります。優勝の可能性がなくなると、場面に関係なく、走れることもあります。なので昨年の周東選手の盗塁王はすごい価値がある。数を増やすために走っているわけではなく、勝利に結びつくかが大事なことです」
ソフトバンクの守備走塁コーチも務めていた飯田氏。周東をはじめ、これまで見てきた走塁技術の高い選手は数を増やすことだけを考えていないという。
「数を増やすだけならば、走者が一、三塁の一塁走者は全て走ればいい。ただ、一、三塁でも走らずに一、二塁間を開けていた方が、打者の打球がヒットになりやすいこともあります。走らない選択ができるのが、技術の高い選手と思います。試合展開、状況を考えながら、盗塁をすることに価値があるんじゃないかなと思っています」
飯田氏もヤクルト時代、2死一塁の走者の時に、チャンスがあっても、走らないことも多かったという。
「僕の現役時代にいた(ジャック)ハウエルや(ロベルト)ペタジーニという強打者が打席に立った場合、僕が二盗したら、一塁が空いてしまう。その次の打者のタイミングが合っていなかったり、相性の悪い投手がスタンバイしていたりする場合だと(四球でハウエルが)歩かされてしまうことがありました」
ハウエルやペタジーニの四球の後に、アンダースローなどの打ちづらい投手や、中継ぎエースが出てきてしまうケースもあった。ならば、強打の外国人に勝負してもらえるような状況にするのも戦略のひとつだ。