オリックス最後の胴上げ投手が歩む第2の人生 “ノムラの教え”を胸に高校球児を指導

治療院で仕事をしながら、磐田南高校の外部コーチも務めている【写真:間淳】
治療院で仕事をしながら、磐田南高校の外部コーチも務めている【写真:間淳】

外部コーチを務める磐田南高では“人間形成”を重視する

 鈴木氏は治療院で仕事をしながら、地元にある磐田南高校の外部コーチを務めている。技術指導以上に重視しているのは、野村氏の教えでもあった人間形成だ。「高校野球の目標は甲子園ですが、目的は人として大切なものを得ること」。投手が試合でどんなに失点しても怒ることはない。しかし、降板後に試合を見ていなければ声を荒らげる。礼儀を欠いたり、道具の管理を怠ったりするのは許さない。

 地元の進学校でもある磐田南は、突出した選手がいるわけではない。だからこそ、鈴木氏は「頭を良くしないと勝てない。それは勉強ができるのとは違う。想定外のことが起きるのが野球なので、考える習慣と準備が大切になる」と語る。それは、野村監督が説き実践した「弱者が強者に勝つ方法」と重なる。

 地元で治療院を開院して15年。プロ野球人生と同じ月日が過ぎた。鈴木氏は今の生活を「充実していて本当に楽しい。口コミで来てくれるお客さんがいて、高校生と一緒に甲子園の夢を追いかけて。お金がたくさんあるわけではないですけどね」と笑う。オリックス時代に成し遂げた輝かしいキャリアだけでは、満足のいく第2の人生は歩めなかっただろう。選手しては“どん底だった”と振り返るヤクルト時代の経験と野村氏の教えが財産となっている。

【写真】鈴木平氏がノートに書き綴った“ノムラの教え”

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