甲子園決勝で9回2死からの大逆襲 伝説の一戦で日本文理のエースが得たものとは?
28歳でマネジャー就任「新しいチャンスや成長につながる」
伊藤さんは妻と長男の3人で暮らしていた。当時は28歳。現役への未練もあった。数日考え抜いた末、答えを出した。「誰でも任せてもらえるポジションではない。野球に関われるのはありがたいし、忙しそうなイメージがあるマネジャーは人生のステップアップにつながると思った」。第2の人生を歩む決断をした。
ヤマハ野球部のマネジャーは伊藤さん1人だけ。選手が使う用具の発注やスケジュール管理など仕事は多岐に及ぶ。大会や遠征となれば、大所帯での行動となるため、宿泊先の確保も簡単ではない。スケジュールは半年先まで考え、試合を組むとなると相手チームの弁当の数や審判の手配、選手が所属する部署への報告も必要になる。
不慣れな仕事に苦労することもある。7月8日に第2子の男の子が生まれたものの、家族と過ごす時間が十分に取れない時もある。それでも、毎日やりがいを感じ、充実していると即答する。マネジャーは人と話す機会が、とにかく多い。チームの窓口であり、顔になる役割と自覚し「自分の対応でチームの第1印象が決まってしまう」と責任感を口にする。
今では「人と話すのが好き。人と話をすると自分が知らなかったことを知れるし、つながりが持てる。新しいチャンスや成長につながる」と話す伊藤さん。だが、元々はコミュニケーション能力が高くはなかったという。変化のきっかけは、あの夏の激闘だった。