東京五輪の“不思議な縁”に導かれた8人 初出場の東北学院支える「イタリア組」

甲子園に行けなくても地方大会で躍動した“イタリア組”たち

 東日本国際大昌平(福島)で主将を務めた菅原立稀(南仙台ボーイズ)もメンバーのひとり。昨秋の福島県大会で初優勝に導き、東北大会8強入りした。今夏は第1シードで臨んだが、準々決勝で日大東北に逆転負け。菅原自身は4打数1安打1打点で、チーム唯一の打点を挙げ、気を吐いた。

 イタリア遠征メンバー2人が所属する山形城北は山形大会初戦で、春優勝で第1シードの酒田南を撃破。主将だった中村成良(仙台ボーイズ)は3打数2安打2打点でチームを牽引した。東北生活文化大高(宮城)の手代木瑠(仙台太白シニア)はリードオフマンとして躍動。夏は3回戦で4強入りすることになる聖和学園と対戦。手代木は延長10回表2死二塁で左前に安打を放ったが、二塁走者が本塁でアウト。延長11回の末、0-1のサヨナラ負けと惜敗だった。

「公立校で仙台育英を倒したい」と、仙台市選抜メンバー15人の中で唯一、公立校に進んだ宮澤太陽(仙塩東シニア)も仙台商で活躍した。背番号3をつけ、打順は4番。身長187センチの長身左腕として先発投手も任された。4回戦の仙台育英戦も先発し、4回を被安打3、無失点と好投した。強力打線を相手に投球テンポを工夫。同じく打力がある東北学院との練習試合でも試してきた秘策を大一番で披露した。5回からエース・齋賢矢(3年)にリレーし、3-2で勝利。仙台育英の県内公式戦を「44」でストップし、昨夏の独自大会を含む夏5連覇も阻止。選抜大会8強の強豪から金星を挙げた。

「次の試合が一番、大事」と心して準々決勝も先発したが、1回2失点で降板。3回にタイムリーを放つなど、5打数3安打とバットで存在感を示したが、延長12回、3-4のサヨナラ負けで高校野球を終えた。宮城大会決勝は悔しさも抱きながら、会場の石巻市民球場で観戦。試合後は「自分たちが行きたかった。羨ましい」と思いながらも、イタリアメンバーを祝福した。東北学院と仙台商は何度も練習試合をしてきた。だから、「打線が強いし、ショートの武田は守備が上手いし、(エースの)大夢がしっかり投げれば、大崩れしないチーム。学院の野球ができれば、勝負ができると思う。悔いなく頑張ってきてほしい」と自信を持ってエールを送る。

 東京五輪は、本来であれば彼らが高校2年の時に開催されるはずだった。しかし、新型コロナウイルス感染拡大の影響で1年延期され、交流事業としてイタリアで熱い夏を過ごした中学生は高校3年になった。東北学院から約1キロの仙台市民球場では、イタリアのソフトボール五輪代表チームが合宿を行い、大会に臨んだ。不思議な縁で結ばれ、何かに導かれるように、オリンピックイヤーに“高校野球の聖地”にたどり着いた東北学院の選手たち。武田が「負けたチームの分も全力プレーをしたい」と言えば、及川も「みんなでベストを尽くして、最後までいい勝負をしたい」と意気込む。

(高橋昌江 / Masae Takahashi)

RECOMMEND

KEYWORD

CATEGORY