佐藤輝明を「ゴリオ」と呼ぶ戦友 同部屋で見た“モノノフ”の素顔と打撃求道者ぶり
午前中は駅員、午後に練習「もう1度、野球で勝負がしたい」
印象に残っているのが、5月2日の広島戦(甲子園)。プロ入り後初めて4番に座った佐藤輝が、第3打席に逆転満塁本塁打を放ったのを映像で目の当たりにした。
「初の4番で満塁ホームランというのも持っているなと思うんですけど、前の打席で打ち取られた、同じチェンジアップを打ったのがすごい。修正能力が高いなと思いました。打ってくれるのはもちろんうれしいですが、解説者の方が褒めているのを聞くのも、自分のことのようにうれしいです」
多くの視線や、様々な意見が容赦なく向けられるドラフト1位。当初は三振過多を疑問視する声もあったが、己を貫いて新人記録を次々と塗り替えていく。「やっぱり肝が据わっていますよね。大学でも怒られても動じない姿をよく見たけれど、プロでもあれだけ三振しても全く変えずにフルスイングを続けている。自分を持っているところは、見習わないといけないなと思いますよね」。自室には、大学の寮を出る時にもらった佐藤輝のサインを飾っている。
自分も負けてはいられないと、背筋を伸ばす。午前中は駅員などの業務に取り組み、午後は練習。社会人生活にも慣れてきた。大学では外野を守っていたが、今は内野に再挑戦。今は野球をすることに、誰よりも飢えている。
「このままでは終われない。もう1度、野球で勝負がしたい。欠かせない選手になって、チームに勝ちを呼び込めるようなプレーをしたい。信頼される選手になりたいです」
新人王へと突き進む友と、また同じ舞台で――。いつも電話の最後に、必ずお互いが伝え合うのは、ありふれた言葉。でも、濃い時間をともにしてきた2人には、この5文字で十分だ。
「がんばれよ」
(西村志野 / Shino Nishimura)