燕・奥川に息づく「俺はダメだ」の精神… 悩む戦友が突き動かされた“向上心”
悩んでいた東海林の支えになったのは、星稜高の同期・奥川だった
悩んだ東海林の力になったのが、ヤクルトの奥川恭伸投手だった。昨年11月の1軍初登板を観戦したが、奥川は2回0/3を被安打9、5失点でマウンドを降りた。「あいつでも打たれるんだ」と衝撃を受けたが、今シーズンはここまで7勝と奮闘。高校時代は中堅手として見ていたエースが、プロの舞台で活躍する姿をテレビ越しに目に焼き付け、自分のモチベーションにしている。
「あいつは高校ナンバーワン投手と呼ばれても驕らなかった。常に上を目指していた。結構、ネガティブなんですよ。『俺はダメだ』という気持ちがマウンドでの闘志になっているのかなと思う。そういう部分では今でも刺激を受けています」
奥川の活躍に奮起され、自身も打撃を見直した。苦しめられた金属バットと木製バットの違いも、まずはしっかりスイングすること、そして、遠くに飛ばすことを意識して克服に取り組んだ。そのためには肉体の強化も不可欠だと感じ、筋力トレーニングにも励んだ。徐々に力が身に付いてきているのを実感している。
その成果を井尻監督も見てきた。「最近、星稜がすごいから(笑)。東海林もいけるかなと思って」と冗談を交えつつ、打撃の調子、成長を感じて起用したことを明かし「よくやってくれた」と褒め称えた。
「代打は嫌です」と本音もチラリとのぞかせた東海林。それでも、まずは代打から信頼を勝ち取って行かなければいけないのは理解している。星稜のリードオフマンから東海大のリードオフマンへ。新たに一皮剥ける姿を見せたい。
(川村虎大 / Kodai Kawamura)