引退決めた鷹・長谷川勇也 勝利への執念を示した語り継がれるべき2つの“ヘッスラ”

「この1勝が優勝につながると思うと、自然とガッツポーズが出るようになりました」

「優勝の喜びを感じて以来、この1勝が優勝につながると思うと、自然とガッツポーズが出るようになりました。それまでは、1つのプレーで一喜一憂したくなかったのですが、嬉しい方は出るようになりましたね。今でも悔しい表情は出しませんけど」

 当時そう語っていた長谷川は、徐々に悔しさも表に出すようになっていく。2016年4月24日の日本ハム戦。長谷川は2死二、三塁で迎えた第2打席で空振り三振、2死二塁での第3打席で遊ゴロに倒れた。懸命のヘッドスライディングも実らず、いずれの打席後もベンチで悔しさを露わにした。そして、1点ビハインドで迎えた8回の第4打席でこれまでの悔しさをぶつけるように起死回生の同点本塁打。この一打が9回の内川のサヨナラ弾に繋がった。

 その試合後、工藤公康監督は「最後まで諦めない気持ちが勝たせてくれた試合。長谷川くんはショートゴロをすごく悔しがっていたし、それが次の打席でいい形で出た」と語れば、内川も「ハセのヘッスラにチーム全員感じるものがあった。『俺も何とかしなきゃ』という気持ちにさせてくれた」と語っている。

“チームをその気にさせるアウト”もまた、長谷川の真骨頂だった。長谷川の野球に対する真摯な姿勢は、後輩の中村晃や栗原陵矢に大きな影響を与えている。いつか彼らが「アウトになってもチームを燃えさせる術」を身につけたとき、それはまたソフトバンクの大きな“財産”となることだろう。

(藤浦一都 / Kazuto Fujiura)

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