22歳の元女子プロが「おじいちゃんと、ほのぼの」プレー 草野球の聖地で新たな使命
勤務する徳島県阿南市は官民協同で野球による地域おこしを実現
指導者として第一歩を踏み出すにあたり、頭に浮かんだのは京都フローラ時代の3年間監督を務めていた元オリックスの川口知哉氏の姿だ。「すごく良い指導者に巡り会えました。1人1人の良さを残しながら、そこにプラスアルファしてくれる。私は調子が悪いと思ったら、表情に出るし、本当にダメになってしまうタイプ。川口監督から『調子が悪いなりに抑えられる方法を探せばいいだけじゃないか』と言われ、考え方が180度変わりました」
女子プロ野球時代、直球の制球が定まらない時に龍田さんは直球を使わない選択をしたことがあった。「ボール球として使えばいいじゃん。ストレートもあるよと見せるだけでも、バッターは次に何がくるだろうと迷う」と当時の川口監督から言われ、冷静に対処することができたという。「川口監督に教わって、すごく引き出しが増えました。その人、その人に合った接し方や指導ができたらいいなと思います」と恩師から学んだことを今後に生かす。
2010年に全国で初めて「野球のまち推進課」を設けた阿南市は、草野球の聖地として知られている。野球観光ツアーを仕掛け、阿南市在住の60歳以上の女性からなるABO60というチアガールが評判になるなど、官民協同で野球による地域おこしを実現。市職員としてその一端を担う龍田さんは「女子野球も加わったら、もっと野球に興味を持ってもらえると思うので、少しでも力になりたいです」と語る。女子中学生チームからスタートし、将来的には高校、クラブチームと女子選手が野球を続けられる環境を整えていくことが新たな使命だ。
おじいちゃんと野球を楽しみながら、ティーボール指導で子どもたちに野球の楽しさを伝え、阿南市、徳島県、そして四国の女子野球普及発展にまい進する龍野さんの第2の野球人生は始まったばかり。「いずれマドンナジャパンに選出されるような選手を育てていけたらと思います」と夢と希望にあふれた表情を輝かせた。
(石川加奈子 / Kanako Ishikawa)