子どもたちに「成功体験」を 閉校利活用で野球室内練習場を作った大人たちの覚悟

完成した施設に込められる大人たちの覚悟

 使命感と同時に危機感も抱いていた。少子高齢化に伴い、薩摩川内市も野球人口が減っている。福永さんが通っていた地元の高校は野球部員数は減っているという。

「野球をする子どもは減っています。息子が所属するソフトボールチームの子どもたちも少なくなってきている。野球の楽しさを広げ、小さい子どもたちも利用できる施設にしたいです」

 思いを込めた設計を形にするため、福永さんは東京都で野球用品の製造・販売をしている「フィールドフォース」に協力を求めた。フィールドフォースは空き店舗などを改修し、都内や北海道に室内練習場をつくってきた実績がある。吉村尚記代表は「会社の本業はモノづくりですが、野球が気軽にできる場所を増やして、野球人口を回復しなければいけないと思っています」と語る。

 子どもの数が減っていることに加えて、子どもたちには野球以外の選択肢が増えている。野球人口を増やしていくのは簡単ではないが、吉村代表は難題に挑んでいる。

「1人でも多くの子どもたちに成功体験をしてほしいんです。野球は打率3割で好打者と言われるほど、失敗が多いスポーツ。失敗を恐れずに続けることで、目標を達成できると伝えたい。野球用品を販売して終わりではありません。環境を整備することも我々の使命だと思っています」

 野球少年・少女の未来をつくる。完成したばかりの室内練習場には、大人たちの覚悟が詰まっている。

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