燕日本一で光った高津監督の“ぶれない姿勢” 失敗続きの守護神を使い続けた理由

マクガフはシーズン中、回またぎすら一度もなし

 マクガフは11回、12回も続投。出塁を許したのは、12回1死から死球を与えた山足1人だけだった。シーズン中は2回1/3どころか、回またぎさえ1度もなかったが、チームの命運が懸かった最後の最後に、極上の逞しさを見せた。「1度マウンドに上げたからには、よほどのことがない限り降板させない。それがクローザーというものです」と野口氏はうなずく。高津監督はナインの手で胴上げされ、10度宙に舞った後、真っ先に抱き合った相手がマクガフだったのは、偶然ではなかっただろう。

 高津監督がぶれなかったのは、マクガフの起用法だけではない。この第6戦の先発は、第1戦に先発し7回1失点の快投を演じた奥川も十分考えられた。しかしシーズン中、弱冠20歳の奥川を最短でも中9日以上の間隔を空けて先発させてきた経緯がある。さらに第2戦に先発して完封を成し遂げた高橋も、プロ入り後最多の133球を投げ、過去には故障歴もあるだけに回復度に不安があった。

 そこで、この日の先発には高梨を抜擢。野口氏は「仮に3勝3敗で第7戦にもつれ込めば、奥川に5イニング、高橋に4イニングというように、投球回数を分け与えることができる。大怪我をさせないように慎重に育ててきた2人の負担を、日本シリーズでも最小限にしたいと考えていたのだと思います」と指揮官の真意を推しはかった。

 シーズンの佳境から「絶対大丈夫」というセリフで選手たちの背中を押してきた高津監督。ヤクルトが2年連続最下位のどん底から頂点を極めることができた理由はたくさんあるが、このぶれない姿勢は欠かせなかったはずだ。

(宮脇広久 / Hirohisa Miyawaki)

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