地域スポーツクラブが部活を補完できるか 中学硬式野球チームが探る未来の形
子どもたちにとって最適とは何か、大切なのは「多様な選択肢」
解決するべき課題もある。例えば、月謝の問題だ。現在、茅ヶ崎ブラックキャップスでは1万円の月謝を集めているが、学校の部活動であれば月謝は不要。部活動は家庭の経済状況にかかわらず、全ての子どもたちに平等に開かれた入口でもある。
「経済的な理由でクラブチームに入れない子どもたちもいます。ここでも大切な才能を失っている可能性はある。助成金制度が活用できないか、あるいはスポンサーになれば地元企業の税制を優遇することはできないか、今後いろいろな可能性を探っていきたいと思います」
もちろん、月謝だけではチーム運営費には大きく足りない。収益事業として成り立たせるための一歩として、オリジナルのベースボールキャップを制作。通常販売価格に募金を加えた特別価格のドネーションキャップとして販売しながら活動資金にあてるなど、試行錯誤は続く。
経産省と進める取り組みでも野球界に一石を投じているが、「僕は野球が継承してきた伝統を否定するものでも、革新を肯定するものでもありません」と竹下さんは言う。
「僕も高校まで真剣に野球に取り組んでいました。だから、甲子園常連校に代表されるストイックなスタイルのチームがあってもいいと思うし、反対に練習時間が短かったり規則がゆるかったりするチームがあってもいい。そこは色々なチームがあるから面白いじゃないですか。みんなが同じだったらドラマや漫画にはならない。ストイックな方針が好きだったらそこを選べばいいし、長髪のチームがよければそこを選べばいい。大切なのは多様な選択肢が用意されることだと思います」
つまりは、茅ヶ崎ブラックキャップスの運営を通じて、日本の部活動の在り方、そしてスポーツの在り方として新たな選択肢を構築しようというわけだ。また、総合型地域スポーツクラブの活動として、文教大学の協力を得ながら、デポルターレクラブでプロアスリートを指導するトレーナーを講師とし、茅ヶ崎市の小中学生を対象にスポーツイベントなどを開いてみたい想いもあるという。
まだまだ始まったばかりのプロジェクト。やりたい、やれるのでは、と思ったことは躊躇なく挑戦し、試行錯誤を繰り返しながら最適な形を探っていくつもりだ。「スポーツ界を変えられるような価値を創造して、茅ヶ崎から発信していきたいと思います」。子どもたちにとって最適な部活動やクラブチームの在り方は何か。その答えを探る旅は続いていく。
(佐藤直子 / Naoko Sato)