“戦力外通告”の瞬間は「逆に実感が沸かず」 筒香嘉智を蘇らせた“3人衆”の存在

経験して分かったメジャーと3Aの差「気持ちが分かった」

 結局、ドジャースでは復活の糸口を掴みながらも、再びメジャーの舞台を踏むことなくパイレーツへ移籍。だが、そのパイレーツでは出場43試合で打率.268、8本塁打、25打点という結果を出したのだから、ドジャースで過ごした3か月の重みが窺い知れる。

 マイナーを経験し、人として視野が広がったことも良かった。元々マイナーを経験する覚悟を持ってメジャー移籍したが、「日本では3Aは限りなくメジャーに近い場所というイメージだと思いますが、全く逆。僕がいた頃の2軍よりも全然過酷な状況で、これは見た人にしか分からない。すごく価値ある大きな経験になりました」と話す。

 チャーター機で移動するメジャーに対し、マイナーでは民間機を利用。直行便で2時間の距離も、経費削減のため乗り継ぎ便で6時間というのは普通の話。機体トラブルで午後6時の到着予定が深夜3時半を過ぎたこともある。

「飛行機やバスが遅れて、満足にアップもできないままに試合開始はよくあること。移動も食事も日本の2軍がどれだけ恵まれているか。メジャーに昇格した選手がマイナーに戻らないように、必死で結果を残そうとする気持ちが分かりました」

 そう話しながらも、どことなく嬉しそうな表情を浮かべるのは、辛くても日本では味わうことのできない新しい発見がたくさんあったからだろう。

 3年目の今季は労使交渉のもつれによるロックアウトが長期化し、スプリングトレーニングの開始が遅れる可能性もある。それでも「オフの手応えは昨年とは全く違いますね」という筒香は、いつでも渡米できるように着々と準備を進めるだけだ。

「1年目はコロナで少し特殊なシーズンになり、昨年はいろいろな経験をさせていただいた。今年もまた全く違うシーズンになると思うので、僕自身非常に楽しみです。同時にもちろん不安もありますが、昨年感じていた自分自身に対する不安よりも、これから臨む試合に対する不安の方が強い。だからこそ、自分の引き出しを増やしながら準備をしています。1年契約ですし、1年間メジャーでプレーし続けて、終わった時に本当にいいシーズンだったと言えるようにしたいと思います」

 時間は掛かるが丁寧に積み上げる、その姿勢は変わらない。2年の積み上げを経て、3年目にはどんな実を結ばせるのか。2022年バージョンの筒香に期待したい。

(佐藤直子 / Naoko Sato)

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