死闘を制し「怖いものなくなった」 甲子園沸かせた“ほほ笑み王子”が語る夏の記憶
「あの試合の後から自然と笑顔が出るようになった」
エースが力尽きた静岡商は延長13回表に3点をリードされた。ところが、その裏に4点を奪ってサヨナラ勝ち。崖っぷちから這い上がった勢いで、そのまま甲子園出場を決めた。大野さんは4回戦こそ登板機会はなかったが、準々決勝は最大のライバルである静岡を1点に封じて完投。準決勝の掛川西は1-0、決勝の浜名は2-0と2試合連続で完封している。
「日大三島戦を乗り越えて怖いものがなくなりました。あの試合の後からマウンドで自然と笑顔が出るようになりました。それまでは表情が硬かったです」
気持ちの変化は投球も変えた。アクセントになるカーブで指にかかる感覚をつかみ、直球のリリースも定まるようになったという。心のゆとりで表情が一変し、笑顔がトレードマークとなった大野さんは「ほほ笑み王子」と呼ばれるようになった。
思春期に「王子」のネーミングを付けられるのは抵抗がある。大野さんも「恥ずかしい思いはありました」と当時を振り返る。ただ、それ以上に今は感謝の気持ちが大きい。「今でも静岡県では『何とか王子?』と言われる時があります。たくさんの人に知ってもらうきっかけになって、応援していただきました」。16年前を回想して笑みをこぼした。
(間淳 / Jun Aida)