「グラウンドが取れない」という悩みを解消 選手の“流出”防ぐ川崎市の試み

外野から見た「川崎市多摩川丸子橋硬式野球場」【写真:川崎硬式野球協議会】
外野から見た「川崎市多摩川丸子橋硬式野球場」【写真:川崎硬式野球協議会】

練習場所がなかった川崎市、子どもたちが東京都や横浜市に“流出”していた

 多摩川を渡れば東京都大田区で、電車に乗れば数駅で横浜に行ける。練習場所がないために、子どもたちは川崎市外の野球チームに入る。野球人口の流出・減少の解決は急務だった。市も子どもたちのための野球場整備が必要だと感じていた。川崎市の多摩川施策推進課・篠原宏英さんも「場所がないために川崎から離れる子どもたちがいるのは把握していたので、硬式野球ができる場所を整備できないかと思っていました」と語る。

 目的は同じ。川崎硬式野球協議会は、協議会に所属するチームの意見を集約し、川崎市と二人三脚で理想の球場を目指している。例えば、市の予算でまかなえない草刈りやグラウンド整備は協議会やチームで担当。新たに整備された硬式野球場と隣接する練習場は、芝生にすると費用がかかるため協議会の提案でダスト舗装にした。

 ブルペンの場所やネットの張り方、グラウンド整備の方法などは野球経験の長い協議会のメンバーが市に助言することで、子どもたちは安全にプレーできる。協議会の加藤純一代表は「行政に要望を伝えるだけではなく、提案や対案を持っていき、一緒にベストな方法を導き出します。課題に直面した時に、できないと言うのではなく、どうしたらできるかをみんなで考えることが必要だと思います。協議会は行政とチームの橋渡しのような役割です」と語る。

 協議会は球場の予約システムも改革した。球場利用の際はインターネットや電話で希望日を予約する仕組みが一般的だが、首都圏にはグラウンドや練習場所が少ないため競争率が高い。希望者が多いと先着や抽選となるが、マンパワーのある特定の団体やチームが独占的に使用するケースが少なくない。この状況が多くの人に「川崎には野球をする場所がない」と感じさせ、野球少年が離れていく要因となっていた。協議会では所属するシニア、ボーイズ、社会人合わせて5つの硬式野球チームで球場利用の調整会議を開き、均等に各チームへ利用日時を割り当てている。

半官半民で、安定した運営が可能になるメリットも

RECOMMEND

KEYWORD

CATEGORY