全国準Vも「勝てたんじゃないかって」 女子野球屈指の右腕が新球習得で目指す頂点

「現役はあと何年しかない。新しい挑戦を始めました」

 もっとも、一口でスライダーと言っても状況によって投げ分けはしている。「速いスライダーと少し遅いスライダーで緩急を使い分けたり、指のかかりの浅いスライダー、大きく曲げるスライダー……。スライダーの中でも投げ分けているので、キャッチャーは大変だと思います(笑)」。どの場面でどんなスライダーを投げるのか、捕手との呼吸を合わせるためにも普段からコミュニケーションは欠かさない。

 これまではストレートとスライダーを巧みに組み合わせた配球で三振を狙っていたが、「簡単に三振を取れなくなってきてしまった」。そこで野球を始めて20年目を迎える今年は新球種を加え、打たせて取るスタイルにモデルチェンジを図ることにした。気になる新球種とは……。

「カーブを練習しています。曲がる球(スライダー)はあるので、落ちる球がほしいと思って。難しさを感じる時もありますが、年々レベルが上がってくる中で勝つためにはスタイルを変えることも必要。私も年なので(笑)、今シーズンは打たせて取るスタイルで、守備から流れを作りながら、野手のみんなに打ってもらいたいと思います」

 以前にも新球種に挑戦したことはあったが、体への負担が大きく道半ばで諦めていた。だが、チームでは田中幸夏に次ぐ年長となり、「年も年ですし、現役はあと何年かしかない。できることをやろうと、体のケアを万全にしつつ、新しい挑戦を始めました」と胸を張る。

 チームも今季から新たな一歩を踏み出した。昨年まで監督を務めた元日本ハム・阪神の岡部憲章氏は総監督となり、日本代表の中島梨紗監督が新監督に就任。ヘッドコーチには阪神などでプレーした星野おさむ氏を迎えた。

 中島監督は現役時代、クラブチームの「侍」や女子プロ野球の「埼玉アストライア」で投手として活躍。日本代表としてワールドカップ5大会に出場するなど、女子野球発展を支えた立て役者の1人でもある。引退後は国内外で指導経験を重ねた。

 監督自らノックバットを振りながら、それぞれのプレーが持つ意味を解説したり、選手に考えさせたり。選手たちの学びたいという姿勢が前面に現れ、練習は自然と活気づく。田中自身も「いろいろな知識が増えましたし、これからもっと増えると思う。みんなの知識が増えれば、さらにチームがレベルアップすると思うと楽しみでワクワクします」と大きな目を輝かせる。

全日本女子硬式クラブ選手権準Vも「悔しいですよ。勝てたんじゃないかって」

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