肩・肘に負担かけずに硬式に近いボールを開発 「7代目」軟式球に詰まった老舗の技術

バウンドを抑えた「M号」は「スムーズに硬式に入る手助けに」

 技術を駆使した結果、「M号」は「A号」よりも2グラム重い138グラムとなっている。心配される肩や肘への影響について、次のような実証結果が出ている。硬式ボールを100とした場合、「A号」で直球を投げた時の疲労は94、変化球は115だった。一方、「M号」は直球が95、変化球が119とわずかに増えたものの、専門家から「体への影響はない」との評価を得た。

 肩や肘に負担をかけずにボールの大きさや重さ、バウンドを硬式ボールに近づけることに成功。小学生用の「J号」は1グラム重く、直径は1ミリ大きくした。ナガセケンコーの桜庭さんは「小中学校で軟式を経験して硬式に移行する子どもは多いので、M号は子どもたちがスムーズに硬式へ入る手助けになると思います。80年を超える歴史を持つ会社の技術を結集したボールです」と胸を張る。

 昭和初期には200社以上あった軟式ボールを製造するメーカーは現在、4社まで減っている。競技人口が減少している軟式野球の未来は決して明るいとは言えない。だが、ナガセケンコーには業界の先頭を走ってきた矜持と使命感がある。祖父が立ち上げた会社を継承している長瀬泰彦会長は語る。

「長年にわたって軟式ボールを開発してきました。軟式野球連盟、同業者、ユーザー、色んな方面から意見を聞いて、支持されるボールをつくっていくのが役割だと考えています」。

 軟式野球の歴史とともに歩んできたナガセケンコー。直径70ミリほどの軟式ボールには技術とこだわりが詰まっている。

【写真】肩や肘に負担をかけずに硬式球に近い感覚を求めた新軟式ボールの貴重な断面写真

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