自分を知る鈴木誠也 「動」と「静」のさじ加減が引き出したメジャー初打点
中前適時打は“詰まらせて落とす”高い技術で記録した
読みが当たった一球だからこそ、打ち損じを誘発する必要以上の力みは払いのけた。この意識を確かにしたのは、ボールを捉える2球前の空振りだった。鈴木は、外角96マイルの直球をフルスイングしている。メジャー初打点は、「しっかり振る」と「力で自らいかない」という動と静のさじ加減が引き出した。
培ってきた内角高めの速球を“詰まらせて落とす”高い技術で初の中前適時打も記録した。3回裏1死一、三塁で迎えた第2打席を鈴木はこう振り返った。
「ああいう勢いのあるインサイドのキツキツの球っていうのは、なかなか芯で打つのは難しい。あそこは詰まって落とすっていうイメージでずっとやっているので。そのイメージ通りではないですけど、今までやってきたことがしっかりできたかなっていう感じですね」
元来、押し込む右手が強いと言う鈴木だが、体の左側の使い方次第で弱点にもなる。広島時代から地道に取り組んできた体の開きを最後まで我しきることが如実に映る1本だった。
開幕から鈴木が全9打席で目にしたのは計41球。うち放ったファウルは5球。その中に左方向へのものは一つもない――。自分の打撃を知る打者、鈴木誠也に興味は尽きない。
(木崎英夫 / Hideo Kizaki)