大谷の豪快弾と守備シフトの相克 ベースボールは失われた魅力を取り戻せるか 【マイ・メジャー・ノート】第5回
守備シフトは今季限り、スピーディーで多様な戦術は復活するか
4年ぶり4度目の賞を34歳で手にしたクロフォード。昨年11月の電話会見では、余人が知り得なかった気概を感じた。
「今回の賞は今までとは違うものがあります。周りからは年齢からくる守備力の衰えを言われているんだろうなと思っていましたから。それと、数値で細かく分析をする人たちが酷評した2019年だって、悪い感覚なんて全くありませんでしたよ」
さらに、切れ味抜群の言葉を継いだ。
「僕が大事にしているのは、チームが勝つために自分がどう関われるかであって、セイバーメトリクスの数値を伸ばすことではありません」
守備シフトから読み解いたクロフォードは、確率論に縛られないあるべき改革の方向性を暗示しているように思える。一方、技術、感性、そして勘を研磨するための良質の砥石になってきた「本来の守備位置」がグレーゾーン化しているのは、“動かし難い”事実である。
今季限りになることが決まった内野守備シフト。3月10日に成立した新労使協定に盛り込まれた新ルールの先導者、マンフレッド・コミッショナーが描くスピーディーで多様な戦術の復活は、かなうか――。
○著者プロフィール
1983年早大卒。1995年の野茂英雄の大リーグデビューから取材を続ける在米スポーツジャーナリスト。日刊スポーツや通信社の通信員を務め、2019年からFull-Countの現地記者として活動中。日本では電波媒体で11年間活動。その実績を生かし、2004年には年間最多安打記録を更新したイチローの偉業達成の瞬間を現地・シアトルからニッポン放送でライブ実況を果たす。元メジャーリーガーの大塚晶則氏の半生を描いた『約束のマウンド』(双葉社)では企画・構成を担当。シアトル在住。【マイ・メジャー・ノート】はファクトを曇りなく自由闊達につづる。観察と考察の断片が織りなす、木崎英夫の大リーグコラム。
(木崎英夫 / Hideo Kizaki)