鈴木誠也と同じ記録を刻んだ岩村明憲氏 「自身の歩みと重なる」3つの“共通点”

カブス・鈴木誠也【写真:AP】
カブス・鈴木誠也【写真:AP】

「イメージしていても打席に立つと違うことはたくさんあります」

 鈴木も開幕戦でヒットを放ち、18日(同19日)のレイズ戦まで9試合連続安打を記録して岩村氏と並んでいる。「キャンプを教科書として晴れ舞台ですぐに1本が出て気持ちが楽になり、そこからリズムを作り出せたのはないでしょうか」と岩村氏。

 鈴木の優れた選球眼にも重ね合わせる部分があると言う。

「ここ数年でカブスはリゾやブライアントといった主力を放出してチーム再建中です。僕が入った頃のレイズは低予算で、同地区のヤンキースやレッドソックス、ブルージェイズとは格が違いました。なので、野手は勝利のためになんとか塁に出ようと考えていました。勝つためにはフォアボールが生きてくるし、それが必要だと僕も思っていました。今の鈴木君のフォアボールの多さはチーム事情ともつながっているのではないかなと僕は思います」

 揺らぐことのない打撃の形と出塁へのこだわり。そして共通点がもう一つある。鈴木が「本能」と呼ぶ、打席での皮膚感覚を大切にしたことだった。岩村氏は、手元で動くボールと外角に広いストライクゾーンに意識を置き過ぎていたことに気づいた――。

 ある日のオープン戦で自信を持って見逃した外角のツーシームを審判が大きな声で「ボール!」とコールしたことで、「過剰な意識から解放された」と振り返る岩村氏は「いくらイメージしていてもそこは未知の世界。打席に立つと違うことはたくさんあります」と語気を強めた。鈴木はどうか。好例がある。12日(同13日)のパイレーツ戦だった。映像からは順回転に見えていた左腕キンタナの直球が、打席ではナチュラルにカットし「差し込まれた」と明かす。鈴木は、凡打に倒れた1打席目のスイングイメージを変え、次打席で癖のあるその球をきっちり芯で捉え、右中間へと運ぶ2号ソロを見舞った。

 15年の時を経て「9試合連続安打と12試合連続出塁」を記録した鈴木と、過去の自分とが符節を合わせる3つの点を解いた岩村氏は、最後にこう結んだ。

「久しぶりに右バッターが躍動する姿が見られるのは嬉しいですよ。これからもっともっと信頼されるようになってくると、自分の居場所というのができてきます。球場に行くのが本当に楽しくなってくるでしょう。それにしても今の鈴木君の顔はとてもいいですよ」

 岩村明憲氏の声が弾んだ。 

(木崎英夫 / Hideo Kizaki)

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