ベンチ入り1割の日体大に学生が集うワケ ユニ着れなくても与える“将来の選択肢”

日体大・古城隆利監督【写真:小林靖】
日体大・古城隆利監督【写真:小林靖】

300人以上の部員でベンチ入りは25人

 多数のプロ野球選手を輩出している名門・日本体育大の野球部には、珍しい方針がある。リーグ戦や大会のベンチに入れなかったメンバーに、役割や将来の選択肢が与えられていることだ。動画制作の技術を身に付ける部員、コーチングを学ぶ部員、トレーナーや審判を目指す部員もいる。

 2017年秋の明治神宮大会で日本一。近年では西武・松本航投手やロッテ・東妻勇輔投手をはじめ、NPBにOBは多い。チームの方針は「人間力野球」。公式戦の勝利やプロ・社会人といった上のステージを目指すのは大前提にしながらも、社会で通用する人材育成に重点を置いている。

 日体大野球部は1軍から3軍まであり、今年4月に90人の新入生迎え、部員数はマネジャーを含めると300人にのぼる。公式戦のベンチに入れるのは25人だけ。つまり、9割以上の部員は裏方に回る。部員たちは数チームに分かれ、毎朝行われる育成目的の紅白戦「日体リーグ」を行い(YouTubeで配信)、実戦の中で競い合い、大学2年の春までに2軍、3年の春までに1軍を目指して活動する。

 日体大の古城隆利監督は、期限までに目標に到達できなかった部員に対し、選手以外の役割を勧めている。「もちろん、野球を続けたいといえば選手の考えを尊重します。ただ、『何かを大きく変えないとこのままだよ』と伝え、アクションプランを提出させ、練習内容の改善を要求します」と説明する。

 一見、非情にも思えるが、選手生活の区切りを付けさせるのも指導者の責任。グラウンドでプレーしなくても、チームに貢献できる役割はたくさんある。さらに、競技生活を終えて社会に出た時の準備を進める環境を整えている。

配信する動画はプロ野球中継さながらのリプレーやテロップ

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