燕の主砲と鯉のエースに最高評価 セイバーメトリクスで選ぶ3、4月のセ月間MVP

広島・大瀬良大地【写真:荒川祐史】
広島・大瀬良大地【写真:荒川祐史】

「最も失点を防いだ投手」は好調・広島を支える大瀬良大地

 投手評価には「平均的な投手に比べてどれだけ失点を防いだか」を示す指標「RSAA」を用いる。これは(リーグ平均tRA-選手個人のtRA)×投球回数/9という式で算出される。

 ここでのRSAAはtRAベースで算出する。tRAとは、被本塁打、与四死球、奪三振に加え、投手が打たれたゴロ、ライナー、内野フライ、外野フライの本数も集計し、tRA={(0.297×四球+0.327×死球-0.108×奪三振+1.401×被本塁打+0.036×ゴロ-0.124×内野フライ+0.132×外野フライ+0.289×ライナー)/(奪三振+0.745×ゴロ+0.304×ライナー+0.994×内野フライ+0.675×外野フライ)×27}+定数という式を用いて、チームの守備能力と切り離した投手個人の失点率を推定する指標である。

各チームのRSAA上位2選手は以下の通り。

巨人:シューメーカー4.52、今村信貴2.57
広島:大瀬良大地5.47、黒原拓未2.29
ヤクルト:マクガフ2.74、木澤尚文2.26
中日:ロドリゲス3.56、R・マルティネス3.34
DeNA:田中健二朗2.05、入江大生1.67
阪神:青柳晃洋4.13、西勇輝2.87

 NPB公式の月間MVPの有力候補は、新人ながら月間1勝11セーブを記録した大勢投手(巨人)だろう。14回を投げ防御率2.08、奪三振率11.77、WHIP0.77と素晴らしい数字を残しているが、RSAAは巨人で4位。tRAは被本塁打、与四死球、奪三振の他に、打たれたゴロ、ライナー、内野フライ、外野フライ、投球イニング数が影響する。巨人の投手陣は大勢以上に内容が良い投手が多く、特にシューメーカーは27回1/3を投げ防御率0.98、奪三振率8.13、WHIP0.83。打球もゴロ37(51%)、内野フライ8(11%)、外野フライ24(33%)、ライナー3(5%)でGB/FBは1.16と、tRAの数値に好影響を与えるゴロや内野フライの割合が多くなっている。

 それ以上に良い評価をセ・リーグで得たのが、広島の大瀬良大地投手だ。6試合でリーグ1位の44回を投げ4勝1敗、防御率2.25はリーグ5位、WHIP0.95は同2位、そしてQS率100%は同1位だ。また打たれた打球内容はゴロ54(41%)、内野フライ17(13%)、外野フライ55(41%)、ライナー7(5%)でGB/FBは0.75となっている。

 先発投手としてイニングイーターの役割を果たし、内容も良いことを評価して、大瀬良をセイバーメトリクス目線で選ぶ3、4月の月間MVP投手部門に推挙する。ちなみに大瀬良は打者としても月間3安打、1打点をあげている。

鳥越規央 プロフィール
統計学者/江戸川大学客員教授
「セイバーメトリクス」(※野球等において、選手データを統計学的見地から客観的に分析し、評価や戦略を立てる際に活用する分析方法)の日本での第一人者。野球の他にも、サッカー、ゴルフなどスポーツ統計学全般の研究を行なっている。また、テレビ番組の監修などエンターテインメント業界でも活躍。JAPAN MENSAの会員。近著に『統計学が見つけた野球の真理』(講談社ブルーバックス)『世の中は奇跡であふれている』(WAVE出版)がある。

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