鷹・東浜巨、ノーノー達成の裏側 最終回に湧いた“色気”と鎮めた冷静さ

金子を追い込み芽生えた“色気”「最後はちょっと三振を狙いに行こうかな」

 ただ、意識はしても、冷静だった。「ここまで来たら打たれてもいいから、しっかりとゾーンに投げて、自分の投球を最後まで貫こうと思っていました」。ここまでの投球通り、そして普段通り。ストライクゾーンの中で打者と勝負していく。己のやるべきことに集中して、2つのアウトを取った。

 東浜の中で“色気”が出たのは最後の打者・金子侑司を迎えたところだった。初球、144キロのシンカーでファウル、2球目は149キロのストレートで見逃し。2球で追い込んだ。ボルテージは最高潮に達した本拠地。そこで東浜はこう思った。「最後はちょっと三振を狙いに行こうかな」。快挙達成の瞬間へ、少しばかり欲が出た。

 三振を狙いに行った3球目。150キロのストレートはアウトコースへ外れた。この1球で、東浜は我に返った。「ああ駄目だ。色気を出しちゃ駄目だ」。頭の中に湧いた微かな“色気”をすぐさま排除した。いつも通り、ゾーン内で勝負する投球を徹底しよう。すぐさま冷静さを取り戻した。

 4球目、5球目は外角のシンカーでファウル。6球目のシンカーは外に外れて2ボール2ストライクになった。「打ち取るなら自分の代名詞のシンカーか真っ直ぐ、この2つだと思っていた。ただ、バッターもそれは頭にあって、ああいうふうにファウルになっていた」。迎えた7球目。ここで東浜は甲斐のサインに首を振った。

甲斐のサインに首振り選んだ勝負球「僕の中では勝負をかけたボール」

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