鷹・東浜巨、ノーノー達成の裏側 最終回に湧いた“色気”と鎮めた冷静さ

甲斐のサインに首振り選んだ勝負球「僕の中では勝負をかけたボール」

「外の真っ直ぐかシンカーだったんですけど、バッターの反応を見ていたら、そこ(外角)に目がいっていて……。前に飛ぶ感じじゃなかったんですけど、ファウルになるので、終わらせたいと思ってインコースの真っ直ぐを入れて行こうかなと思った。結構、僕の中では勝負をかけたボールでした」

 覚悟を決めて投げ込んだのはインコースの真っ直ぐ。150キロのボールに金子は完全に詰まらされた。力のないゴロが東浜のすぐ左を抜けていった。「捕れると思っていたら、捕れなくて『やっちゃった』と思って。思ったより三森が前にいて、アウトになってくれよ、と思いながら。なかなかソワソワすることってないんですけど、あのシーンはソワソワしました」。祈るような思いでボールを見つめ、そして、快挙達成の瞬間を迎えた。

 実はこの試合、東浜は5回に右足がつっていたという。もともと、汗っかきで、足がつることは珍しくはない。ただ、まだ5回で、球数も50球ほど。「今日は早えな」と東浜自身も少々驚くタイミングだった。ただ「そこからしっかり立て直して、つることもなかったですし、最後はちょっと怪しかったんですけど」と、最後まできっちりと投げ抜いた。

 最終回でも揺れ動いていた東浜の胸の内。快挙達成の裏には、常に冷静でいる自分と、状況によって湧き上がる様々な感情とのせめぎ合いが隠されていた。

(福谷佑介 / Yusuke Fukutani)

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