練習で分かる少年野球日本一のワケ 選手が自ら動いてうまくなる監督の“仕掛け”

内野守備の練習では送球までの時間とスピードを測定する

 小学校中学年を対象にした内野の練習で、辻監督がネットの他に用意したのはスピードガンとストップウォッチ。選手たちに「ゴロを捕ったらネットに投げよう」とだけ話して、ボールを転がす。ネットの後ろには保護者が座り、選手の送球をスピードガンで測定する。

「87キロ」「82キロ」「94キロ、これまでの最速!」。送球のスピードを伝えられた選手は、速い球を投げようと力を込める。次はゴロを捕ってから送球までのタイムをストップウォッチで計測。同じようにタイムで競争心に火が付いた選手たちは、少しでも素早く送球しようと無駄のない動きを考えながら練習する。

 辻監督は選手に命令や強制をしない。徹底的に無駄を省いて、1つの練習で最大限の効果を生む。そして、選手が自然と動く工夫を仕掛けている。「うちのチームは体が大きい子や、身体能力の高い子が多いわけではありません。どんな子でも、うまくなる仕組みを作っているだけです。常に今より良い練習の仕方を探しています」。

 1日24時間の条件は、どのチームも同じ。活動が土日祝の多賀少年野球クラブの練習時間は決して多くない。強さの秘密が練習環境と選手集め以外にあることは、練習を1日見るだけでも十分に分かる。

(間淳 / Jun Aida)

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