手術で40針…溢れた涙「自分の手じゃないみたい」 元中日ドラ1が直面した“激変”
イップス状態に「もう訳わかんなくなっちゃって」…涙した日も
投手にとっては致命的だった。考えられないほどすっぽ抜けたり、指にかけようとして力を入れると逆に引っ掛けたり。全くストライクが入らず、イップスのような状況に陥っていた。4月のウエスタン・リーグでは登板するたびに失点。「もう訳わかんなくなっちゃって」。人知れず涙した。
これまで積み上げてきた感覚は、もう戻らない。「考え方を変えないといけないと思いました。戻すんじゃなくて、新しいものを作っていかないとダメだって」。ほぼゼロベースから、自らの投球と向き合った。
周囲のサポートもありがたかった。練習で打撃投手を務めた際には、当時2軍を担当していた荒木雅博・内野守備走塁コーチや森野将彦・打撃コーチから「打者と勝負するつもりで投げてみろ」と言ってもらった。本来ならストライクに投げて打者に打たせるための練習なのに、感覚を取り戻すための気遣いだった。
手応えが生まれたのは夏場。試合でも結果が伴うようになり、登板はなかったものの1軍に一度呼ばれた。新型コロナウイルス感染拡大で開幕が遅れた翌2020年も、2軍のマウンドで自信を深めていった。