「自分で考える野球」の意外な原点 全国連覇した少年野球監督の“指導論”とは
「バットを振れ」ではなく、自ら振りたくなるような指導を心掛ける
「息子が『あの人、何かを投げた』と言ったんです。この時、自分の息子は、ごみを捨てる人間にしたくないと思いました。ただ、物を捨ててはいけないという教育はしませんでした」
ごみを捨てない人間を育てるには、「ごみを捨ててはいけない」と教育するのが一般的な考え方。しかし、辻監督は「ごみを拾いたがる人間」に育てようと考えた。
「ごみを拾う人間になれば、ごみを捨てる人間にはなりません。次の日から、ビニール袋を持って小旅行に出掛けました。ごみを見つけたら拾って、毎日ビニールをいっぱいにして家で捨てていました。この出来事が子育てのスタートで、今の思考回路にもつながっています」
辻監督は「打てるように、もっとバットを振れ」というような指導はしない。選手がバットを振りたくなるような練習や言葉によって、選手が自主的に動くようにしている。「ごみを捨てるな」と考えを押し付けずに、自然と捨てなくなる息子たちを育てたように。「あの時の高校生のおかげですね」と指揮官。空き缶のポイ捨てに怒りを感じるだけで終わっていたら、多賀野球は誕生していなかったかもしれない。
(間淳 / Jun Aida)
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