佐々木朗希を「そりゃ呼びたい」 侍ジャパン・吉井投手コーチが語る成長の過程
長い手足を自在に操作「こんなに体幹が弱いのに、よく安定させているな」
佐々木朗の身体的な特徴は長い手足だ。これを思うように動かせる感覚と、投球フォームは天性のものだった。広く、大きい肩の可動域が、160キロを軽く超える剛速球を生む。不思議なのは、その大きな動きと制球力を両立させていることだ。
「指先をはじめとした感覚が優れているんでしょうね。こんなに体幹が弱いのに、あれだけ足を上げてよく安定させているなと思うこともあります。これでもっと体が強くなればさらに良くなりますよ」
さらに上を目指した強化メニューは「本人任せ」なのだという。取り組んでいるのは自重や、軽めの重りを使ったトレーニングだ。吉井氏は「これは制球がいい要因でもあるんですけど、関節の位置とかには本当に敏感ですね。重いウエートトレーニングをして、変化がありすぎると修正できないと思っているのかもしれない」。繊細な感覚を大切にしながら、強化を図っている。
それでも、160キロを超えるボールを次々に、制球良く決めていく姿は驚きでしかない。球速と制球は本来、トレードオフの関係にあるはずだ。思いきり力を込めて投げればボールは暴れ、狙ったところに投げることを重視すれば球速は抑えられてしまう。両立を可能にしているのは繊細な感覚があってこそ。さらに上の世界への可能性も秘める。
「もしかしたら、今でも『6~7割の力で投げているのかな』と思うことがありますよ。100の力を出せてないのか、出してないのかはわかりませんが……。だって、クイックで投げても160キロが出るわけです。そこで足を上げたらもっと出るはずなので、多分セーブしているはずですよ」