飽きさせない目的が思わぬ効果 全ポジションを経験させる強豪少年野球チームのノック
18、19年日本一の「多賀少年野球クラブ」はノックで全ポジションに就かせる
滋賀・多賀町にある少年野球チーム「多賀少年野球クラブ」では、選手を特定の守備位置に固定せず、全てのポジションを経験させる。練習に飽きさせない目的で始めたが、辻正人監督は思わぬ効果を実感。2018、19年に連覇を果たすなど、全国大会常連のチームに引き継がれる特徴的な練習の1つとなっている。
野球の練習時間は他の競技に比べて長いと言われている。サインプレーや連係など、チーム全体で精度を高める練習に時間を要する点などが理由に挙げられるが、小学生の子どもたちが飽きずに続けるのは簡単ではない。
土日祝日に全体練習をする多賀少年野球クラブでは、基本を身に付けた小学生は午前9時から午後3時、トップチームは午後5時まで汗を流す。辻監督は選手が好奇心や向上心を持って自主的に動くよう、練習に様々な工夫を凝らしている。ノックもその1つで、全ての選手に全ポジションを守らせる。
「最初の目的は飽きさせないためでした。ところが、別の効果が生まれていたんです。なんで三塁手や捕手が二塁手にアドバイスしているのだろうと」
ある日、辻監督は選手たちが別のポジションの仲間に助言している姿に気付いた。ノックや練習試合などで守備位置に就いた経験から、それぞれの選手が別のポジションを守るチームメートの気持ちを理解し、意見を交わしていたのだ。辻監督は「守ったことがあるので、全てのポジションの難しさや仲間の苦労が分かるんです。選手を1つのポジションに固定していたら、仲間からアドバイスをもらえません」と説明する。
選手を飽きさせないように考えた方法が、結果的にチーム全体の守備力を向上させた。今では、他のポジションの気持ちを理解させることが、一番の目的になっている。