辻監督が見せつけた強い西武の“伝統芸” じわじわプレッシャーが「うまく行った」
三塁走者はスタートが遅れ、一塁走者は二塁に近づき過ぎ…それでも
続く18歳の新人・滝澤夏央内野手も四球を選び、2死一、三塁。ここで1番・若林楽人外野手の打席でカウント0-1からの2球目に、ダブルスチールを敢行したのだ。強肩で鳴らす巨人捕手・小林が二塁へ送球すると、一塁走者・滝沢は二塁ベース手前まで来て急停止。これを見て、三塁走者オグレディが猛然と本塁へ突入した。巨人遊撃手・中山は本塁へ返球するも、微妙なワンバウンドとなって小林がミットに収め切れず。オグレディは3点目のホームに滑り込んだ。
試合後の会見で報道陣から「鮮やかに決まりましたね?」と聞かれた辻監督は、「内容的には、鮮やかではない」と苦笑交じりに首を振った。「三塁走者のオグレディのスタートが遅れた。ちゃんと捕球されていたらアウトだったかもしれないが、(小林が)ジャッグルしてくれた」と解説。一塁走者の滝沢についても「あれでは二塁ベースに近づき過ぎ。アンツーカーの前で止まって挟まれなければいけないのに、勢いあまって近づき過ぎた。タッチされたら終わりですから」と反省を求めつつ、「とはいえ、あいつなら、あそこからでもチョコマカ逃げ切れたかもしれないね」と、身長164センチの韋駄天を称えた。
「これも勢い。今日はうまくいった日だった」とえびす顔の辻監督。結果的に巨人の守りのミスにも助けられたが、小技と機動力はライオンズの伝統芸であり、精神面でも相手に重圧をかけ追い込んでいく。現役時代に黄金期を牽引した辻監督にとっても、理想に近い勝ち方だったのではないか。
(宮脇広久 / Hirohisa Miyawaki)