難病克服し“日本一の主将”に 亜大20年ぶりV、チームを変えた田中幹也の覚悟

主将として好守でチームをけん引した【写真:中戸川知世】
主将として好守でチームをけん引した【写真:中戸川知世】

3年夏に発覚した難病を乗り越えて、日本一の主将に

 田中幹は東海大菅生高では、2年夏の甲子園で4強入り。小柄だが、得意の守備と走塁でプロからも注目を集め、亜大では1年時から大学日本代表に選出されるなど活躍していた。しかし3年夏、ススメバチに刺されたことをきっかけに病院に行くと、難病の潰瘍性大腸炎であることが判明。半年間、入退院を繰り返した。体重は10キロ落ち、やせ細ってしまったが、諦められない夢があった。

 2月に新型コロナウイルスのクラスターが発生し、寮が閉鎖された。選手たちが実家に帰る中、1人寮に残って、練習を続けた。「僕はプロ野球選手になるのが夢。ここで諦めるわけにはいかない。練習をさせてほしい」と監督に懇願、努力する主将の姿にチームメートも「自分たちも、もっとやれる」と発奮した。今春のリーグ戦では全チームから勝ち点を挙げる完全優勝、田中幹もリーグ最多タイ記録となる1試合6盗塁を決め、ベストナインにも輝いた。生田監督も主将の復活に目を細め、「チーム状態が急激に良くなった原因はそれしか考えられない」と語った。

 田中幹は「本当に野球ができなくなるんじゃないかと最初は思ったんですけど、ここまで回復して、あらためて野球ができる喜びというのを感じました」と、大舞台を楽しんだ。攻守に躍動した“小さな主将”の存在感は、誰よりも大きかった。

(上野明洸 / Akihiro Ueno)

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