苦闘の日々を乗り越えて戻ってきた1軍 鷹・甲斐野央が辿り着いた新境地

最速159キロを何度もマークするも「出力は出そうとしていない」

 自身の投球に好感触を得だしたのは「5月に入ってから」。5月6日のオリックス戦から13試合連続で自責点なし。自己最速タイの159キロを何度もマークした。「それまではちょっと自分の中でも『よし、これや!』というのがなくて。5月入って徐々に良くなってきた感じがありました。でも、1軍のピッチャー様様、1軍のピッチャーが凄すぎるんで恐れ多いです」と笑う。

 自身の変化も実感する。「出力の部分で出そう出そうと思っていた自分がいたんですけど、本当に今は出力を出そうとしてないけど、球は行くよねっていうふうな感覚がある」。出力を振り絞らなくとも、ボールは走る。「正直1年目のときとかは、もう『エイっ!』『エイッ!』って投げてましたけど、1年間投げ切るとなると、いかに力入れずにいい球を投げるかっていうのを最近は思っていた」。思い描いていた“理想の形”になりつつある。

 自己最速は159キロと、160キロまであと1キロに迫る。「あと1キロで大台なんですけど、出ないっすね。難しい、壁でかいっす。出したいですけどね」と笑いつつも「出たらOKぐらいでいきたいなと思いますね。気持ちでは出てるんすけどね」と欲は出さない。出力を出さないスタイルで、壁を突破させたい。

 ここがゴールではなく、ここからがスタート。ようやく1軍での立ち位置を掴む挑戦が始まる。「そこを僕も目標にしてずっとやってきてましたし、やっぱり自分じゃないピッチャーが投げているのを見ると、もどかしさって絶対あると思う。意識しなくても意識すると思うんで、そこをやっぱり投げていきたいなとは思ってます」。ソフトバンクファンが待ち望んでいた男の復帰。交流戦終盤に苦しんだリリーフ陣の救世主となってもらいたい。

○著者プロフィール
福谷佑介(ふくたに・ゆうすけ)
1982年8月、東京都生まれ。大阪や愛知で少年時代を過ごし、早大から報知新聞社入社。サッカー担当、野球担当を経て独立し、フリーに。月刊ホークスやベースボールマガジン、ホークスファンクラブ会報誌などにも寄稿。現在はFull-Countで執筆活動を行う。ソフトバンク・甲斐拓也捕手のスローイングを初めて「甲斐キャノン」と表現した。

(福谷佑介 / Yusuke Fukutani)

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