なぜ「ノーサイン」で強いのか 2年連続全国V、常勝軍団になった少年野球チーム

座学で選手に戦術を伝授「子どもたちを『教えたがり』にするのが大切」

 全選手の“脳”を辻監督と同じようにする。そのために、指揮官は座学を取り入れた。試合で起こり得る様々な場面をシミュレーションし、ベストな戦術や根拠を伝える。雑談や冗談を交えながら繰り返し説明すると、野球初心者や小学校の低学年も興味を示し、理解を深めていく。

「はじめは大変でした。座学に時間がかかりましたし、練習中もプレーを1つ1つ止めて、戦術を説明していました。ただ、2年くらいたったら、ものすごく楽になりました。内容を理解した小学校高学年が、年下の子に教えているんです。今では試合中、私はサインを出しません。こちらの意図を分かっているので、伝える必要がないからです。ノーサイン=脳サイン野球です。チーム内でミスが起きた時も、私は口を出しません。子どもたちが自然と話し合いを始める様子を、うなずいて見ています」

「ノーサイン=脳サイン野球」は多賀少年野球クラブの特徴であり、後輩たちに引き継がれている。知識や考え方の継承が「常勝チーム」となった根底にある。

「子どもたちを『教えたがり』にするのが大切です。人に教えると自分の復習になりますし、教えられた方は年下の子に教えたくなります。全国大会の予選の時、トップチーム以外の選手は休みにしていました。ところが、ユニホームを着て球場に応援に来ていました。試合に勝った選手たちにタッチしてほしくて、手を出すんです。野球が上手いという以上に、年上のお兄ちゃんとしてかっこいいと感じているんだと思います」

(間淳 / Jun Aida)

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