知的障害のある球児と慶應高野球部員が深める絆 合同練習会で与え合った刺激

連合チームの一員として愛知大会に出場する林くん(中央)を全員で激励【写真:編集部】
連合チームの一員として愛知大会に出場する林くん(中央)を全員で激励【写真:編集部】

「甲子園夢プロジェクト」のメンバーと慶應高野球部が3度目の合同練習会を実施

 3度の合同練習会を経て、深まった絆がある。「甲子園夢プロジェクト」のメンバーと、慶應義塾高校野球部のメンバーの間に生まれた絆だ。1月に行われたオンライン合同練習会から始まり、3月には慶應義塾日吉台野球場で対面による合同練習を実施。そして6月18日、再び同グラウンドに夢プロジェクトの球児たちを迎えた慶應高野球部員は、ともに懸命に白球を追い、とびきりの笑顔を見せた。

 知的障害のある球児も甲子園挑戦の機会が得られるサポートをしようと始まった「甲子園夢プロジェクト」。2021年3月の発足以来、オンラインや対面による合同練習会を重ね、18日の練習会で12回目を数える。関係者を通じて活動を知った慶應高野球部の森林貴彦監督は、プロジェクトの中心となる東京都立青鳥特別支援学校主任教諭の久保田浩司さんらの想いに共感。コロナ禍の影響もあり、まずはオンラインによる合同練習会で互いの理解を深める交流を図った。

 3月には念願の対面による合同練習会が実現。この時、慶應高野球部は現3年生の部員が中心となり、夢プロジェクトのメンバーと交流。キャッチボールやノック、試合形式の練習などを行った。甲子園経験もある強豪野球部との合同練習に夢プロジェクトのメンバーは大きな刺激を受けていたが、逆もまた然りだった様子。森林監督はこう言う。

「夢プロジェクトのメンバーの中には野球が好きでも1人で練習するしかない子もいる。コロナ禍もあって、慶應の部員たちは野球をできることは当たり前ではないと気付いたようです。野球は、時間、空間、仲間の3つの“間”がないとできない。いつも野球ができることに感謝する体験になったと言っていました」

 今回の合同練習会には、夢プロジェクトから24人、慶應高野球部からは2年生が参加。はじめにそれぞれ1人ずつ、2人一組の練習パートナーを作り、ウォーミングアップ、キャッチボールに取り組んだ。練習パートナーはほとんどが初対面。夢プロジェクトのメンバーの中には会話が苦手な子どもたちもいたが、野球部員たちは積極的に声を掛けたり、耳を傾けたり、そっと手を添えてエスコートしたり、それぞれ工夫しながらコミュニケーションを図っていた。

 夢プロジェクトのメンバーも上手くボールを投げる方法や捕球の仕方などアドバイスを受けると、それを体で表現しようと一生懸命にトライ。上手にできてもできなくても野球をすることが楽しくて仕方がないメンバーの姿に、「ナイスキャッチ!」「今の良かったよ!」とポジティブな声掛けを続ける野球部員たちにも自然と笑顔が溢れた。

学生コーチが声を揃える慶應高野球部員への刺激

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