0-82で大敗のチームを支えた“元不登校”主将 最後の夏も笑顔で切り替えられるワケ
2回に33失点、大会記録の1試合与四死球34も「楽しくできたので良かったです」
流れを変える投球がしたかったが、なかなか変わらなかった。「(千葉学芸打線は)全員が4番でしたよ」と振り返るように、2回も初回の1イニング最多失点の大会記録をさらに更新する33失点。さらには、1年生の田中里空(りく)内野手が熱中症のような症状でうずくまる事態に。試合が中断した。
田村監督は「没収試合も考えた」と明かすように、試合を棄権する選択肢もあった。もちろん前田は続けたい気持ちはあったが、決して選手や監督には続けたいとは言わなかった。熱中症が命の危険もあることや、体力がまだついていない1年生に責任を負わせるのは酷であることは分かっていた。「ずっと『ここで試合に出られくなってもお前のせいじゃないよ』と前田は言っていました」と田村監督がベンチでの様子を明かした。
審判団が5分間の給水タイムを設け、待機していた医師が「試合に復帰して大丈夫」と判断。「次何かあったら、監督判断で棄権する」という条件で試合は再開された。前田は最終的に4回1/3を投げ、40安打を打たれた。さらにはチームとしても大会記録の与四死球34という不名誉な記録も作ってしまった。それでもひたすら、チームメートに「まだまだ!」「楽しもうぜ!」と声をかけ続けた。