子どもたちが自由にプレーできる環境を…少年野球の「移籍」が事実上解禁に

全日本軟式野球連盟・小林三郎専務理事【写真:間淳】
全日本軟式野球連盟・小林三郎専務理事【写真:間淳】

「考慮すべき特別な理由」と判断されれば移籍容認

 考慮すべき特別な理由とは、引っ越しや転校、指導者によるハラスメント被害を想定している。いわば、子どもたちが野球を続けるための「通常の理由」だ。選手登録を受け付ける各都道府県の支部や下部組織が「通常の理由」と判断すれば、移籍は認められる。移籍に関する規定には「年度内は選手等の異動を原則禁止する」という文言が冒頭に残ったものの、事実上の移籍容認を意味する。

 制度改定により、理不尽な理由で選手登録を抹消せず、移籍を妨害してきたような、不当に選手の移籍を認めないチームに対応する。小林専務理事は「現場で問題が解決しないのであれば、子どもたちがより良い環境で野球ができるように我々がルールをつくっていきます」と語った。

 移籍を禁止する制度は元々、選手の引き抜きとチームの渡り歩きを防止するために設けられた。特定のチームが、能力の高い選手を中心に、別のチームから移籍させるケースがあったためだ。大人の事情でチーム力に差が生まれたり、選手を引き抜かれたチームがメンバー不足で廃部に追い込まれたりした。だが、今は移籍を禁止する制度が、子どものプレーする場を奪う弊害となっている。ただし、移籍の規制緩和は子どもたちに正しい野球環境を提供するのが目的であり、当然ながら特定のチームによる選手の引き抜きを容認するわけではない。全軟連は「指導者には、選手の将来を第一に考えた指導にあたってほしいという前提がある」としている。

 全ての指導者や保護者が子どもの意思を尊重したり、子どもの将来を考えたりすれば、本来ルールは必要ないだろう。ただ、そうではない現実がある以上、全軟連の改革に期待するしかない。

(間淳 / Jun Aida)

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