今季、ボールは実際に飛んでいないのか? 1万球超を捕ってきた“収集家”の証言【マイ・メジャー・ノート】第9回

ハンプル氏(右)と『THE BASEBALL』を手にするバド・セリグ前コミッショナー【写真:本人提供】
ハンプル氏(右)と『THE BASEBALL』を手にするバド・セリグ前コミッショナー【写真:本人提供】

今季の打球の飛び方は「人間の目を通して感じる違いは確かにあります」

 熱い収集道にはこんなエピソードも添えられている。

 MLBの使用球は中米コスタリカで製造されているが、その場所は極秘だ。ハンプル氏は現地へと飛び、カーナビにも出てこない人里離れた山奥へと分け入り、ついにローリングス社のボール工場を探し出す。さらに、関係者以外の立ち入りが禁止されている工場内部の写真撮影にも成功。MLB公認球の製造工程を貴重な写真とともに詳述している。

 これほどまでにファナティックなハンプル氏の目線が欲しかった。7月25日、連絡が取れた。今回の趣旨を説明すると、間髪入れずに返してきた。

「外野席から見るホームプレートがとてつもなく遠いなと感じる球場がいくつかあります。そこでキャッチしたホームランは深く記憶に刻まれますよね。10年ほど前はそんな喜びをたくさん得ました。ところが、ここ5年、特に最近の3年はそういった球場でも飛距離のある打球が激増していました。当たり前の光景だったとまでは言いませんが、もはや驚きはしないという感じでしたね」

 汲めども尽きぬ泉のように言葉が湧き出る。

「フィリーズのシチズンズ・バンク・パークを浮かべてください。右中間には3階のアッパーデッキがありますが、そことか、2階席に届く当たりをよく見ました。ドジャー・スタジアムなら左中間と右中間の上段。けれど、今年はそんな飛距離のある打球が減っています。いくつかの球場ではいつも同じ席に座りますから、去年までなら“来た!”と叫ぶ飛球が今季は失速。なかなか僕を越えていきません。まぁ専門家による科学的な実証データはどうなっているのかは知りませんが。でも、僕の目が悪くなって打球を追えていないということではないですからね。人間の目を通して感じる違いは確かにあります」

ハンプル氏は、Aロッドの通算3000安打となる本塁打もつかみ取っている

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