今季、ボールは実際に飛んでいないのか? 1万球超を捕ってきた“収集家”の証言【マイ・メジャー・ノート】第9回

これまでに球場で1万個以上のボールをゲットした『THE BASEBALL』の著者ザック・ハンプル氏【写真:本人提供】
これまでに球場で1万個以上のボールをゲットした『THE BASEBALL』の著者ザック・ハンプル氏【写真:本人提供】

筋金入りのボール収集家として知られるザック・ハンプル氏

 ここ5年ほど話題になってきたMLBの公式球。近年顕著となっていた本塁打増加傾向への歯止め策として、今季から「飛ばないボール」が使用されていることはファンの間で周知であろう。

 これまで高地のコロラドや乾燥帯のアリゾナなどでは保湿器の中に入れていたが、今年から全球場で湿度管理が徹底されている。ボールは湿度によって芯材を巻く糸が伸縮するからだ。芯材の毛糸の巻き具合を反発率(=0.530~0.570)で緩めたものが今季の使用球となっている。本塁打数や飛距離、打球速度などを数年前までと比較した今季の変化を伝える記事がここまで多く出ている。もうデータを並べる対比は退屈だ。提供したい視角がある。

 球場で観戦を楽しむファンの目にはどう映っているのだろうか――。うってつけの人がいる。筋金入りのボール収集家として知られるザック・ハンプル氏だ。まずは、彼の著作『THE BASEBALL』を紹介したい。

 表題から野球の戦術や技術を説いたものか、メジャーの歴史をたどる内容かと思いきや、ページをめくっていくと最後までボールにまつわる話で貫かれている。プロフィールには「これまでに通ったMLBの48球場(旧球場や海外開催などを含む)で4662個のボールを捕った」とある。

 選手に日々のルーティンがあるように、ハンプル氏にも本番に向けた準備がある。そのウォームアップはこう始まる。

 開門と同時に客席へ走る。外野フェンスを越えるボールだけではなく、ファウルボールの効果的な捕球場所を球場別に割り出した独自データから目指すべき場所は常に決めているという。フィールドへ縦に走る通路と横に並ぶ客席間の狭い空間を走り抜け、捕ったボールが飛び出ないように工夫を施したグラブで打撃練習のボールを追う。

今季の打球の飛び方は「人間の目を通して感じる違いは確かにあります」

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